Precious -1-
「進児〜!! なんとかなりそうか〜??」
「何とかなりそう…って!!」
進児が手を伸ばした先には小さな穴があり、
奥に小さな黄金像。
「よっ!! …取れた!!」
横で同じようにロープ1本でぶら下がっているビルが笑顔で告げる。
「ほら、取れたなら さっさとずらかるぜ!!」
「あぁ。」
進児とビルは蔦のびっしり生えている塔のてっぺん近くで
ロープ1本ずつに吊られていた。
「マリアン!! リールで巻き上げてくれよ!!」
彼がてっぺんにいるマリアンたちに叫ぶように言うと返事があった。
「うん!!進児君!!」
キュルキュルと巻き上げる音がして 進児とビルは塔のてっぺんに到着。
そこにはマリアンとリチャードが笑顔で待っていた。
「お帰り!! 進児君!!」
「あぁ。」
彼の手の中の像を受け取るのはリチャード。
それを見つめるビルは呟く。
「やれやれ…今回のお宝はこれかぁ〜。」
「学術的には価値のあるものなんだぞ。」
リチャードの言葉でやっと関心の目を向ける。
「こ〜んな小さな像がねぇ…」
「ほら、さっさと撤収するぞ。」
「あぁ。」
進児が真面目な顔して3人に告げると リチャードとビルはそれぞれパラグライダーを拡げる。
マリアンはパラグライダーを拡げた進児に抱き付き、ベルトで固定。
4人が塔から滑空し、降下すると幌つきの馬車が平原で待ち構えていた。
「お疲れ様、みんな。」
出迎えたのはビルの恋人・ジョーン。
ビルは愛しい恋人を抱きしめる。
その光景を見て、呆れるようにリチャードが呟く。
「おやおや…相変わらずだなぁ…」
彼が言うと進児が突っ込む。
「…少しでも羨ましいなら、彼女を作ればいいだろうが。」
進児の言葉に彼は目を細めて応えた。
「…必要ないさ、僕にはね。
さっさと帰ろう。
きっと領主様がマリアンの帰りを待っているよ。」
「そうね。
早速パパに報告しなきゃ♪」
幌馬車の御者席にリチャードが乗り込むと
残る4人は後ろの幌の中へ。
肉体労働した進児とビルは 恋人の膝枕で眠る。。。
***
ビスマルク大陸はルーグ・イーリス・ナンナルの3国に支配されていた。
ルーグ国はいくつもの領地に分け、
それぞれの領地を貴族に治めさせていた。
領地の中でも広い地域を持つピール地方。
ここの領主はルヴェール。
国王からの信頼も厚く、民からも慕われている。
領主の館の一部には孤児院があり、
両親を失った子や、捨て子たちが暮らしていた。
ルヴェールは国を作るのは民なのだと常に口にしており、
そのためには子供が育たなければならないと感じている。
事実、幼い頃に両親を失った進児、ビル。
赤ん坊の頃に捨てられていたリチャードがこの孤児院の出身。
逆境にめげずに育った彼らを領主の娘・マリアンは兄のように慕っている。
特に進児にはずっと恋心を抱いていた。。。
ルヴェールは趣味を実益を兼ねて、古美術品を蒐集している。
ある日、森へ狩りに出た時に 進児があるものを拾ってきてから
彼が目利きだということに気づいた。
ルヴェールは娘と進児とビルにあるものを探し出して欲しいと依頼。
3人は頭を使うのは少々苦手で、調べ物も不得手。
幼い頃からの仲間で 都の大学を既に卒業し
学者をしているリチャードに相談。
彼の調査結果から無事に見つけ出すことが出来た。
それ以来、ルヴェールはこの4人に正式に依頼するようになる―
「トレジャーハンター」が4人の…
5人の裏の顔となっていく。。。
リーダーとなったのは正義感溢れる進児。
元々、真っ直ぐな性格で曲がったことが大嫌い。
図太そうに見えて実は繊細。
仲間からも一目置かれる存在の彼。。。
その彼を好きな 幼馴染・マリアン。
領主・ルヴェールの一人娘で 3人とはまるで兄妹のように育った。
けれど いつも彼女を守りそばにいた進児に対して
いつしか恋心を抱くようになった。
今は一応、領主の娘として 邸でレディ教育を受けている。
しかし もともとおてんばな気質で 身も軽いので
男3人では無理な狭い空間や高いトコロでの活躍を主な場としていた。
進児と双璧をなすビルもまた剣士。
進児と比べていたって軽く、おちゃらけているが
実は誰よりもナイーブ。
女好きは天性らしく、幼い頃から美人と見れば声を掛け捲っていた。
しかし今は ジョーンという年上の金髪グラマーな恋人がいる。
ビルは領主の館から独立して、ジョーンと同棲中。
チームのブレーンとなったリチャード…
進児ビルと違って冷静沈着で、切れ者。
捨て子だったという負い目があり、ふたりと違い少々影を帯びている。
幼い頃から秀才と呼ばれ、12歳で都の大学へ進学。
17歳になる頃、ピールに戻ってきた。
領主の館から独立して家を構えているが一人暮らし。
学者で古書店を営みながら…
時折、女性を連れ立っていることはあっても
決して、家に入れない。
彼の口癖は「特定の女性は必要ない。」
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(2006/3/30)
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