Mighty Mighty Love − 2 −







デスキュラの戦艦を破壊する事に成功した進児とリチャードが帰ってきた。

「ただいま〜。」

ひとりの進児にビルが問いかける。

「あれ?リチャードは?」

「あぁ。リチャードなら彼女をベッドに連れていったよ。」

「そうか。」

マリアンが回線を開いて、通信する。
無事に作戦終了し、帰還したことをルヴェール博士に報告するために。

「お父様。無事に最後の戦艦を殲滅しました。」

「そうか、ご苦労だった。ビルを早く病院に連れて行きなさい。」

「はい。」

進児がマリアンに変わって話し始める。

「ルヴェール博士。もう一つ報告があります。」

「何だね?」

「実は敵艦の司令官に頼まれて地球人を一人、保護しました。」

「ほお?」

訝しげにルヴェールは首をひねった。

「それがどうもリチャードの知り合いらしいんです。」

「ほう。その人の名は?」

「あ…、すみません。聞いていませんが… 確か「ファリア」って名前だったと思います。」

ルヴェール博士はその名に聞き覚えがあった。

「ファリア……?」

しばし考え込むルヴェール博士に進児も黙って待っていた。




リチャードは彼女をベッドへと運んで行った。

失神したまま、意識を取り戻す様子がない。

でも彼は嬉しかった。

この5年間ずっと想っていた、探していた彼女だと言う事に。


まさかデスキュラ人の妻になっているなんて思いもしなかったが。

とりあえず彼女を寝かせたままブリッジへと向かった。



リチャードがブリッジに入ると、モニターにルヴェール博士の姿が見えた。

「マリアン、ルヴェール博士に彼女の事を報告したかい?」

「それがね、進児君が話したんだけど、彼女の名前を聞いてお父様ったら黙っちゃったのよ。」

彼はモニターのルヴェール博士に話しかけた。

「博士、進児から聞いたと思いますが…」

「あぁ。それで彼女の名は?」

彼は思い切って言った。

「彼女の名は…ファリア=パーシヴァル。
英国王室庁長官であるパーシヴァル公爵の令嬢です。」

「あ…あぁ。それで聞き覚えがあったのか…」

ルヴェール博士は思い出したようだった。

パーシヴァル公とは面識があった。

「リチャード、例の彼女か…」

進児の言葉にマリアンとビルは驚いていた。

「進児…お前、何か知っているのか?」

「ちょっとだけな。」



モニターの向こうのルヴェール博士は4人に向かってこう告げる。

「解った。ビルと一緒にとりあえず病院に連れて行ってくれたまえ。」

「了解しました。」

通信を終えるとビルがリチャードに問いただす。

「おい。あの艦で何があったんだよ?」

リチャードが沈んだ表情で応える。

「…あの艦の司令官が妻が地球人だから助けてくれって言ったんだ。
それが彼女だった。」

「リチャードの彼女って…まさか?」

マリアンが疑問符で問う。

「さっきルヴェール博士に言ったとおり、
英国王室庁長官アーサー=パーシヴァル公爵の令嬢・ファリア。
僕の婚約者だ。」

彼の言葉にマリアンもビルも驚く。

「こっ…婚約者ぁ??」

「僕が13歳。彼女が12歳の時に婚約したんだ。」

「そうだったの…」






***********************




彼女が次に目覚めた時は、火星のセントラルシティの病院の一室だった。


横たわる彼女は静かに呼吸していた。

白く細い腕にはチューブがつけられ、点滴のしずくが染み入っていた。

ぼんやりと意識を取り戻した彼女は呟く。


「白い…天井…」


ふと顔を横に向けるとそこには懐かしいリチャードが手を握ったまま眠っていた。

「そう…私…  あれは…夢じゃなかった…」

意識がはっきりしてきた。

彼女は身を起こしてみる。

彼の手がぴくりと動く。

「ん…ファリ…ア…」

その手を思わず引く。

もう彼に愛される資格がないと思っている。

愛していない異星人の男に純潔を奪われ、その男を愛してしまったから…

ベッドから降りて、部屋の外へ出ようとする。

身体がふらつく。
でも一刻も早くこの場から逃れたかった。

目覚めた彼の手で阻まれる。

「何処へ行くつもりなんだい?」

「は…離して!」

身体が思うように動かない。

がっしりとした手で抱き留められる。

「私は…私は… もう…」

溢れ出す涙をこぼしながら、彼の胸を叩く。

「あなたに愛される資格なんて……」

そんな彼女を強く抱き締める。


「!」

「君が変わっていようとも、僕は…」

「言わないで!私は… もう… もう…」

その唇を覆うように強引に重ねる。

熱い唇に彼の想いを感じた彼女は震える。


「忘れるんだ。デスキュラの事なんか、忘れるんだ!」

「でも… でも…」

泣きじゃくる彼女の身体を強く抱き締める。

「もう君を離したくないんだ!」

「!   リチャード…」

その真剣な瞳に息を呑む。

「ずっと ずっと …君を探していたんだ…」

「わ… わたし…」

彼はベッドに彼女を押し倒す。

唇が再び重なる。

熱くて息苦しいほどの口づけだった


彼女はその熱で思考が蕩けてきた。

唇から喘ぎすら洩らさないような長い長い口付け。




やっと唇が離れると、彼女は大きく呼吸する。

開放された唇から熱い喘ぎが洩れる。

「…愛してるんだ。」

その言葉に彼女の固く閉じた心が開き始めた。

「あ… わ、私も…」

白く華奢な腕が彼の背中に回る。

彼の耳元で囁く。

「…忘れた事はなかった…」

堅く二人は抱き合う。

別れていた魂が行き場を見つけた瞬間だった。




















__________________________

あとがき(2004/8/21)
気がつけば日付が変わってますよ(笑)

もういつでもこの二人はLOVE×2なんですな。
書いているこっちが砂吐くよ。。。。


一応、二人の再会シリーズ第2弾の後半。

[デスキュラの妻だったVer.]ということで。

やっぱりちょっと不幸編かな?


(2015/03/24 加筆改稿)

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