Midnight shuffle −1−




―夜中


バーディは自室のベッドで不意に目覚めた。

「ノド…乾いた…」


シースルーのセクシーなナイトウェアのまま、大居間の奥にあるカウンターの向こうのキッチンに向かう。


みんな部屋で休んでいる時間帯なのでほとんど照明はついていなく
ほとんど真っ暗に近い。
非常用の明かりだけが灯っていた。


キッチンに入り冷蔵庫を開けて、中のミネラルウォーターのボトルを手に取り、
グラスに注いで一気に飲む。

「ぷは〜…」


グラスとボトルを片付け部屋に戻ろうとした時、
飛び出してきた影。


ゴツ!!


「痛ッた〜い!!」
「もう、誰よ!!」

お互いの声でわかる。

「スージー??」
「バーディさん?!」


「どうしたのよ?」
「なんだか…のど渇いちゃって…」
「そ。私もよ。もう飲んじゃったけど。」

「そう…」

「じゃ、お先。」


バーディは何も思わないまま、ぶつけたおでこをさすりながら自室へと戻っていく。


スージーは先ほどのバーディと同じようにミネラルウォーターのボトルを取り出し、
グラスに注いで、こくこくと飲み干す。


「ふぁ…ねむ…」

スージーもまた睡魔に襲われ、眠い目をこすりながら部屋に戻っていく…




   *

―朝

ロックがいつものようにバーディを起こしに行く。


「低血圧なの。」と前から言ってたバーディを起こす役目を買って出ていた。
それというのも最近、挑発的なナイトウェアを着ているのを見るため…


「おっはよ、バーディ♪」

いつものようにドキドキして上掛けをめくると…   スージーが可愛い寝顔で眠っている姿。
高揚感は一気に下がる。

「は?? なんで…スージー?」



同じ頃、キッチンでも叫び声が上がっていた。


「何で、バーディが朝飯作ってるの??」

ジミーが見たものはスージーの服を着て、キッチンに立つバーディの姿。


「って、何よ、ジミー。」


口調はスージーだが明らかに外見はバーディ。

「ちょっと…バーディさん!! メシ作れるならいつもなんで手伝わないんだよ!!」


突然憤慨するジミーに答える。

「私いつも作っているじゃない。ジミー。
私、バーディじゃないわよ…」

「じゃなんで金髪碧眼でナイスバディ何だよ!!」

「え!?」

慌てて手に持っていた包丁を鏡代わりにして自分の顔を見てみる。

映りこむのは… バーディの顔

「えええええーーーッ!!」





   ***


ロックもその頃、パニくっていた。


「ちょっと… なんでここにスージーが寝てるわけ?? 俺、部屋間違えた??」

通路に出ると…間違ってない、ここはバーディの部屋。


「何言ってるのよ…ロック。 このセクシーなバーディさんのどこが… 
きゃああっ!!


バーディは自室のドレッサーの鏡に映る自分の姿が目に入った。

「え?! 何で?? どうして?? スージーになっちゃってるわけ??」


黒髪にダークブラウンの瞳… スージーの姿。






通路を誰かが走ってくる音が響く。
はぁはぁと息を切らせて駆け込んできたのはバーディ(外)とジミー。
中にいたロックとスージー(外)の目が丸くなっていた。


「「「「は??」」」」


「ちょっと… スージー…?」
「バーディさん…??」


お互い自分の姿を見て驚くしかなかった。

「「なんでぇ〜ッ!!??」」


「ちょっと…おふたりさん、どーゆーわけ?」

ロックがふたりに問いかけるとハタとなる。

「ね…ひょっとしなくても中身が入れ替わっちゃってるわけ?」

スージーの外見のバーディが口にする。

「そうみたい…」

バーディの外見のスージーが返事する。





目の前の光景にロックもジミーも呆然とする。


まるきり正反対のふたりの中身が…入れ替わってしまった…


バーディ(外)がスージーの服を着て、スージー(外)がバーディの服を着ようとしたが無理だった。
そもそもボディサイズも全く違うのだから。

しかたなく外見に合わせて服を着る。


「やだ…こんなカッコ…よくおなか冷えないわね。
冷えは女性の大敵よ。」

少々むっとしたバーディ(中身)も口にする。

「…もう…こんなブラ、何年振りよ…」

確かにAカップのブラだけにローティーンの頃しか記憶にない。


「悪かったわねぇ!!」



ロックとジミーを部屋から放りだして着替えた。



   *


大居間にでるとブルースとビートが口をあんぐり開けてしまう。

バーディ(外)がエプロンをしてキッチンに立ち、スージーは何もしないでみてるだけ…



「なんでスージーの飯じゃないわけ?
つーか、バーディ…料理できないって言ってなかったけ?」

ビートがテーブルにひじを着いているスージーに問いかける。

「…私、バーディよ。」

「は? 」

隣に座る姿は間違いなくスージー。


「あっちにいるのがスージー。」

「へ?」

ビートがキッチンに立つバーディを見ると慣れた手つきでちゃっちゃとみんなの朝ごはんを作っている。


「どーゆーこったよ?!」

「わかんないのよ。」

半ば投げやりな返事。

「は〜??」

ブルースは意外と落ち着いた様子でタバコを手に問う。

「夜中に何かあったのか?」


「え…あ、そういえば… 冷蔵庫の前でおでこぶつけたわね。 ねぇ、スージー?」

「えぇ。ブルースさん。」

料理を作る手際を見てるとやはり中身がスージーだとわかる4人。




ジミーがそばに行き出来上がっている料理をひょいとつまむ。

「これ… スージーの味だよ。やっぱり…」


「じゃ…本当に中身が入れ替わってるんだな…」


ロックが呟くとみんな、うんうんとうなずいていた。



「ふたりとも、額をぶつけただけか?」

ブルースはいつもと変わらぬ調子で問いかける。

「「ええ…」」


「ふむ… 何か他の要因があると思うんだが…?
何時ごろか憶えているか?」

「えっと… 日付が変わることだったから12時くらいかしらね? スージー…?」

「えぇ…バーディさん…」

お互いの名を呼ぶが他の4人には異様な光景。




「そうなる前、何してた?」


「え? 寝てたわよ。」
「私も…」

ふたりとも同じ答え。

「ひとりで?」

その質問で明らかに性格がわかる。

「勿論よ!!」

頬を染めて大声で叫んでしまったのはバーディ(外)のスージー。

「えぇ…」

普通に返答するのはスージー(外)のバーディ。




「ふむ… ちょっとこれは手ごわそうだな。」


ブルースはあごを撫でた後、懐からシガレットケースを出し、
新たにタバコに火をつけふかしだす。


「ちょっと…当分、このままなワケ?」

スージー(外)がバーディ口調で問いかけた。


「そーゆーことになるな…」




to -2-
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(2005/10/12)


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