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Labyrinth -1-



「そこまで!!!」

進児とビルは息が上がり、はぁはぁと苦しそうな呼吸の中、自分たちを制止した師匠を見る。

その場を腕を組み、じっと静観していたのは修行仲間のリチャード。


「お前たち、よく頑張った・・・・」


二人の剣の実力は拮抗しあい、勝負がつかなくなっていた。
ただ体力を消耗するだけ。
おそらく今の二人に勝てるのは戦略に長けた、リチャードだけだろう。


満面の笑みで師匠は告げる。

「これで剣術も免許皆伝じゃ。」

「やった~~~~!!」

進児とビルは狂喜の声を上げる。
1歩先に出てリチャードは拍手を送る。

「良かったな、進児。ビル。」

「あぁ。おまえにゃ負けてらんねぇからな。」
にっとほほえみを向けるビルがいた。

3人がうれしそうに微笑み合う中、ドメスは真面目な顔。


「・・・・さて、あとひとつ大切な修行が残っておる。」

「「「え??」」」


弟子である3人は師匠を見る。

「しかし、これは私が与える知識でも訓練でも鍛錬でもない。」

謎めいた言葉にビルが問いかけた。

「じゃ・・・・なんなんですか?」

「うむ。3人に与える最大の修行はな・・・・」

ごくりと息をのみ、次に続く言葉を待つ、進児・ビル・リチャード。



「お前たちにふさわしい伴侶を見つけることじゃ。」

思いもかけない言葉に思わず叫ぶ3人がいた。

「「「は、伴侶~?????」」」」



「あ、あの・・・師匠。」

「ん?何じゃ、リチャード。」

「僕にはその・・・許婚がいます。」

「お前は手っ取り早く、その相手を口説くがよかろう。
しかし、進児とビルは自力で探さねばならん。」

「はぁ?本気ですか?」

驚く進児は師匠を凝視。


「あぁ。そうじゃな。。。。タイムリミットは明日から半年。半年後にここに戻り、報告じゃ。
明日の朝一に旅立て。
リチャードはとりあえず実家に帰るといい。」

有無を言わさない空気がドメスにはあった。

「は、はい。。」

「では、今日はここまでじゃ。」


師匠ドメスは笑いながら修練場を後にした。
残されたのは突然の課題(?)に驚いたままの進児・ビル・リチャード・・・・





******


夕食の席で3人は憂鬱な顔をしていた。



「いいよなぁ~リチャード。お前さ~許婚がいんなら探す必要ね~じゃん。」

ビルは少々羨ましげにリチャードに言う。

「しかしな、ビル。僕はその許婚本人に5歳のときにしか会ってない。
相手が自分の好みかどうかも解らないんだぞ。」

リチャードの発言にビルは眉をひそめる。

「確かに・・・それはそれでつれえなぁ。」

「だろう?一概にそれがいい相手とは限らないし。
お前たちみたいに自分の好みの女性を探すというほうが僕は逆に羨ましいよ。」



ビルは彼の立場を想像してみる。

「そっか。それもそうだな。」


三者三様の事情と心情があった。。。。






******


翌朝、3人はドメスから旅の資金を手渡される。


「いいか。今回の旅の目的は・・・それぞれの伴侶を探すこと。
もし見つけられなくても報告のために半年後に戻ってくること。
緊急事態が起これば戻ってくるといい。」

神妙な面持ちでドメスは3人に告げる。

「あの、師匠。」

「ん?何じゃ、リチャード。」

「もし、目的が果たせなかった場合、どうなるのですか?」

彼の質問に少々目を細めて返す。

「・・・・果たせなくても構わん。その道のりが重要じゃ。」

「・・・・・そうですか。」


リチャードは少々、気が楽になった。

「それでは、元気でな!!」



笑顔でドメスは3人の弟子を送り出す。

進児・ビル・リチャードは10年を過ごしたドメス師匠の屋敷を後にした――――――






to -2-


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(2010/01/28)