kitten -3-




皇太子リチャードのもとに子猫が来て3ヶ月が過ぎた。

すっかり、彼に懐いている。

彼のベッドの上の足元や枕元で眠るのはもちろん、
午前の彼の執務室では天気のいい日には出窓で眠る姿を。
時折、膝の上で眠っていることもあった。

城内を歩く皇太子の肩の上にちょこんと子猫が乗っているのを使用人たちは微笑ましく見ていた。


彼が愛犬を連れていた時のように…


*****

1年の半分ほどは各地の視察に出かける皇太子。

子猫はいつも同伴していた。懐に入って。

同伴する近衛兵は隊長の進児か副隊長のビルであった。

ビルは進児から聞かされていたが、初めて子猫を見たとき、あまりのキュートさに頬が緩んでいた。

「お前、人間の女性だけでなく、猫でもOKなのか?」

「いや、そんなことはないです!! でも、この子猫ちゃん、可愛いですね〜♪」

「…お前には絶対に預けられないな…」

「失礼な!殿下! さすがの俺様でも子猫は無理ですってば!」

「ははは、冗談だよ。」

馬上の二人は笑い合う。
子猫は彼の懐で丸まっていた。

今回は5日以内で帰れる地域の視察である。










*****


しかし、さすがに体力があるとは言え、移動した初日の晩はぐっすりと眠りに落ちる。



彼の足元で眠っていた子猫のリリー。


窓の外には満月に近い月の姿。

ふうっと月光が猫の姿にかかる。

真夜中、異変が起こる。



黒い霧のようなものに巻かれていくリリー。

寝入っているリチャードは全く気付かない。

ふっと霧が晴れると、そこには黒髪の乙女の姿。


自分で自分の手を見て気づく。

「あ!? 私…戻れてるの!?」


思わず鏡を覗き込むリリー。

間違いなく人間であった頃の姿。

しかし、完全な人間ではなかった。

黒い猫耳と長くふさふさとしたしっぽが残っていた。

「どうして、突然、戻れたのかしら?」

思案していても全く見当がつかない。

「はぁ。。。。。」




乙女に戻ったリリーはベッドで眠る皇太子を覗き込む。

「ありがとうございます。殿下。助けてくださって、拾ってくださって、愛でてくださって…」

感謝を示す彼女の首には間違いなく子猫のリリーの百合のチャームがきらめいていた。




月が傾き始めると、また黒い霧のような煙に巻かれていくリリー。

「あ、猫に、戻ってしまうのね…」


切ないその言葉は月光とともに消えていった。







*****

朝、リチャードの足元には子猫のリリーが丸くなって眠っていた。。。。


昨晩の奇跡を彼は知らない。








to -4-



______________________________________________________________
(2012/02/11)
実は…な、展開になってきました。
さてさて、どうなりますことやら。。。。






to Bismark Fantasy

to Bismark Novel

to Novel top