Gone With The Wind -1-
その日、少女と家族は初めての宇宙旅行に旅立っていった。
それが運命の日だと知らずに……
宇宙旅客機・アテナU号はデスキュラ星人の奇襲を受けた。
コクピットの機長と副操縦士は勿論、客席の乗客たちもパニックに陥いる。
少女の父親は妻とまだ幼い息子を緊急脱出カプセルに押し込み、
それから娘を抱き上げてカプセルに入ろうとしたが定員が大人一人用しか残っていない。
とりあえず娘を乗り込ませ、自分は違うカプセルに乗り込んだ。
それが運命の別れ道だった…
デスキュラ星人は物資を奪うだけ奪って、撤退した。
あとには宇宙船の残骸と脱出用カプセルが漂っているだけ。
乗客乗員の半数弱の人たちが地球連邦軍によって救助されたが
あとの60%ほどの人は遺体が発見されたか、行方不明とされた。
その行方不明のリストの中に少女の名はあった。
*************
ガニメデ星から出稼ぎに出ていたトニーは3人の仲間とともに家路についていた。
半年振りに我が家へ帰る喜びでいっぱいだった。
ガニメデ星が見えてきた頃、レーダーに反応が。
彼らはその正体を肉眼で見たとき、驚く。
緊急脱出用のカプセルがたった1個で漂っていたからだった。
「おい、どうするよ?」
仲間の一人がリーダーであるトニーに視線を合わせる。
「回収すべきだろうな。」
「厄介ごとは困るぜ。」
違う仲間がぼやく。
そんな彼らに構わず、トニーはカプセルを回収した。
オレンジ色のカプセルにはひどく焼けた跡があった。
手動でカプセルを開ける。
仲間が中を覗き込む。
中にはぐったりとした様子の11,12歳くらいの少女が横たわっている。
「おい!女の子だぞ!」
仲間が叫ぶ。
トニーは中から少女を抱き上げ、軽く頬を叩いてみる。
意識は戻らないが呼吸している。
顔をよく見ると2年前に病死した妹に面差しが似ている事に気付いたトニー。
少女を家に連れて帰ることにした。
トニーが家に見知らぬ少女を連れ帰った事は瞬く間に村中に広まった。
彼の家はガニメデ星の田舎・エルミナ村。
湖の真ん中にある小さな島の村。
少女は原因不明の記憶喪失状態だったため、身元を調べることもできない。
トニーは村長でもある父親を説得して、少女を家に引き取ることにした。
少女はベスと名づけられ、家族と村の人に可愛がられ、
利発な少女は次第に心を開き、村へと馴染んでいく。
トニーの家族は村長である父・ボブ。
優しいが厳しい母・アリー。
5歳年下の弟・ロバートの4人家族だった。
そこで少女は心優しい人たちに囲まれ、優しい娘へと育っていった。
べスがエルミナ村に来て3年後、彼女をここに連れてきたトニーは
出稼ぎ先の工場がデスキュラに襲撃され帰らぬ人となる。
それから2年…
ベスは17歳の美しい乙女に成長。
トニーが死んで一番悲しみが深かった彼女はやっと微笑を取り戻した。
村では一番の器量良しで働き者だと評判の少女。
美しい黒髪に映える白い肌。
薄紅色の唇。
風のようにさわやかな声。
村中の男は彼女に魅了されていた。
ただいつも兄・ロバートがそばにいるので誰も彼女に告白するものはいなかった。
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(2004/12/12)
(2015/03/27 加筆改稿)
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