faithless -2-
通信を終えたロックとバーディがアパートの近くの路上まで車でやってきた。
アパートの周辺に黒塗りのいかにもシンジケートスジだと解る車両が3台停車している。
「どういうこった? まさかブラディシンジケートにハメられたんじゃねぇか?」
「そのようね。どうしようか…?」
ロックとバーディはしばらく様子を伺っていると
ブロンドの美女がアパートから出てきて
車の男に話しかけていた。
青ざめた様子の女性―
何かあるとふんだふたり。
会話を終えた女性はアパートへと戻っていく。
涙を流し、口元を押さえ、苦しげな様子で―
「何か…ブルースと関係ありそうね。」
「そうか?」
「女のカンよ。」
バーディは車から降りて、アパートの裏手に廻る。
裏口から中に入リ、ブルースがいるという3階へと階段を登っていく。
例の女性は廊下の隅で泣いていた。
「あの…」
バーディが声を掛けるとびくりとなり、振り返る。
バーディは少し驚く。
以前、ブルースが愛した女性だと聞いたモデルのステファニア=バルドンヌに似てる気がした。
カンは確信に変わる。
「…ブルースを知っていますね?」
「え? あなた…まさか、JJ9の方?」
「そうよ。
何かワケがありそうね。
話してくださらない?」
「あ、私…私…」
ぼろぼろとバーディの腕の中で泣き出してしまう。
女性は落ち着くとバーディを部屋に連れて行く。
居間で珈琲をベビーシッターの女性に出してもらう。
「あぁ…もういいわ。向こうに行ってて。」
「…はい。」
ベビーシッターのルーは子供とブルースがいる部屋に行く。
「私、ソフィア=ロウズと言います。
昔…少しだけブルースと付き合ってましたの。」
「!?」
「あの人が去ってから…妊娠してるって気づいた。
けど…流産した。
辛くて…地球から出たの。
あの人に捨てられたことも流産のこともすべて忘れたかった。
でも…先週、私の勤めているカジノのオーナーから…クビにすると脅されて…」
「何ですって!?」
ぽろぽろと泣き出しながらもソフィアは言葉を何とか続ける。
「ブルースの子供を産んだことにして、彼をここに縛り付けておけと…
子供はベビーシッターの子供よ。
私の子でも彼の子供でもないの。
髪を染められているのよ、子供は…
お願い!! 私のことはともかく、あの人を助けてあげて!!」
そう告げる女の心情を痛いほどバーディは女として解ってしまう。
「そんな事、言わないで。
ブルースもあなたも助けるわ。ね?」
「あ、あぁ…」
バーディはすぐにロックに通信機で簡潔に経緯を話した。
「OK。解った。」
ロックがバーディと同じように裏口から3階へと向かう途中、
ブラディシンジケートのヤツラとばったり出くわす。
「くそっ!!JJ9のヤツだ!!」
ブラディの連中はあっという間にロックの銃の前に倒れていた。
「こりゃ…やばいぜ!!」
J9V号を呼びたいが、狭い路地の街で少し無理かなと感じながらも
事態が事態なのでビートに連絡をつけ呼び出す。
その頃、ブルースの元にソフィアとバーディが向かうと
例のベビーシッターが子供を抱きかかえ、逃げ出してきた。
「バーディ!? 来てしまったのか?」
「ブルース!! 良かった、無事ね。」
先に玄関から逃げ出そうとしたベビーシッターと子供はブラディの手下に殺されてしまっていた。
「!? ソフィア!! 君と…私の子が!!」
「あの子は…私の子じゃない。」
「?!」
「詳しい話はアト!! 逃げるのよ!!」
ポォーッ
J9V号の汽笛が鳴り響く。
「来たな。 おい、ブルース、無事か?」
ロックが手下を倒して駆け込んできた。
玄関は血の海となっている。
ロックとバーディが増援でやってきた手下たちを倒していく。
窓の外にはJ9V号からの縄ハシゴ。
「ソフィア、早く!!」
ブルースに追い立てられるように縄はしごを昇る。
ロックとバーディが銃で倒していくがキリがない。
「くそっ!! おい、バーディ、先に行け!!」
「ありがとう。ロック。」
外でもライフルでブルースを狙っていた。
「危ない!!」
ブルースを狙った銃弾をその身で受け止めたソフィア。
縄ハシゴからずり落ちてしまうが、ブルースが間一髪、腕を掴んだ。
その間にバーディロックもJ9V号が上昇し始めたこともあり、
縄ハシゴに掴まる。
4人は何とか中に乗り込めた。
ブルースの腕の中でソフィアは意識を失っている。
「ソフィア…」
銃弾は貫通していた。
とりあえず血止めを施したが
病院に連れて行く必要がある。
しかし、大気圏を脱出しつつあるので、この星ではもう無理。
痛み止めの注射をし、しばらく安静にさせることに。
「となりの星に連れて行くしかあるまい。」
「そうね…」
ブルースとバーディがなんとか容態が安定したと見て取る。
「ところでブルース。
…一体何があったんだよ。」
ビートは全く事情を知らないまま。
ジミー、スージー、DDも同様に。
「カジノホールで…ソフィアに逢った。
彼女にアパートまで連れて行かれて…
「あなたの子よ。」って子供を見せられた。
「しばらくここにいて。」とも…」
ブルースの顔には悲壮感が浮かんでいる。
「何だって?! じゃ、ブルースに隠し子??」
ビートが呟くがそれを否定したのはバーディ。
「違うわよ。」
彼女の一言で一斉に視線が集まる。
「…バーディ。君はソフィアから何か聞いたのか?」
「えぇ。この女性… カジノのオーナーに脅されて
ブルースをハメる罠に利用されたのよ。
ブルースの昔の知り合いってことで…」
「何だって?!」
「子供はベビーシッターの子供で、髪もブルースと同じ色に染められているって…」
「…ホントか?」
「本当よ。」
その声で一同はベッドの上に横たわるソフィアを見つめる。
「ごめんなさい。ブルース、ごめんなさい…」
「…ソフィア。」
ステファニアにそっくりの彼女の泣き顔に胸が苦しくなる。
「やっと一人前のディーラーとして認められたのに… いきなりクビにするって言われて…
今の地位を職を失いたくなかったの。
あなたを苦しめることをしたくなかったけど…
反抗したら何されるのか解ってた。
怖かったのよ。」
嗚咽を上げ、泣き出してしまった彼女をバーディは抱きとめる。
「泣かないで…傷に触るわ。」
ブルースはそっとその手を取ると手の甲にキスする。
「ソフィア、すまない…
昔のことを利用されたとは…ブラディめ…
君は何も悪くない。
私のほうこそ、迷惑をかけたようだ。」
昔と変わらぬ優しい瞳で見つめるブルースを見て、言葉も出ない。
「あ…」
「仕事を失ってしまったのは…私の責任でもある。 すまない、ソフィア。
…… 隣の星の病院に入院してもらうことになるが…金のことは心配するな。」
ちいさくこくりとうなずく。
*
トライ済みの星のため、ソフィアを病院に運ぶとすぐに燃料補給をして出発することに。
「ありがとう。ブルース… 許してくれて。」
「いや…こちらこそ、すまなかった。」
優しい笑顔を残して去った彼―
ソフィアは口に出せなかった言葉を今も胸に閉じ込めていた。
(―愛してるわ、ブルース。 でも、サヨナラ、ね…)
頬に涙がひとすじ 零れていた―
*
―J9V号
「それにしても…ブルース。隠し子なんて…嘘だったけど、あの部屋にいたってことは
見に覚えがあったからなんでしょ?」
「…ぅ…ッ!!」
バーディの指摘は大当たりで答えられない。
「ま、しかたないんじゃないの?
男だったらあんな美女を相手にしたいもんだよな。
なぁ、ビート??」
「あぁ。俺ちゃんも美女と熱い夜を過ごしてみたいぜ〜♪」
「やぁねぇ…ビートさんもロックさんも…」
スージーが不潔とばかりに二人を睨みつける。
「ホント、ホント… 美女ならここにいるでしょ?」
セクシーなポーズをとってビートに見せるバーディ。
「じゃ、バーディ、俺の相手してくれる?」
「…ヤダ。」
「ほら。」
笑いが起こる中、ブルースだけは正面モニターに映る宇宙空間を見つめていた。
ブラディシンジケートのヤツラに自分の過去まで利用されたことに
憤りを感じていた―――
Fin
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(2005/11/25)
*あとがき*
一気に来ると一気に書いちゃいました★
コメディにしたかったんだけど…意外とシリアス調になってしまいました。
こんなんでいかがでしょうか?
感想お待ちしております♪
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