Detour −1−







ビスマルクチームがヘルペリデスを破壊したことで、デスキュラ人と地球人の戦争は終結した。


彼ら4人はそれぞれの道を歩み始める。

進児はマリアンとともにレース場を巡る日々。

ビルはジョーンを連れてアメリカ・テキサスに帰った。


そしてリチャードは…失った恋人を探していたが見つけることは出来なかった。

ガニメデ星で出会った少女・シンシアを連れて故郷・スコットランドへと帰っていく。


物語はその後から始まる。









リチャードの実家は由緒正しい上流貴族のランスロット公爵家。

父は王室庁特別諜報部の部長。
王室関係者からは絶大な信頼を寄せられていた。

そして今回は彼の息子・リチャードがビスマルクチームの一員として活躍した事もあってそれは不動になってく。





彼はガニメデ星で出会ったシンシアという孤児院出身の娘を連れて帰ってきた。

その娘と結婚したいと言ったが両親も一族も友人さえもが反対した。

父・エドワードにはきつく言われる。

「お前は!折角の家名に 名誉に 泥を塗る気か!」



リチャードはこのままではダメだと思い、シンシアを遠縁の貴族に預かってもらうことに。

そこで彼女は教育を受ける事になる。

英国の歴史、貴族の歴史。
マナーにダンス、乗馬に音楽。
様々な事を学ぶ毎日で彼に会うことはままならなかった。








*******


戦争終結から2ヶ月が過ぎた頃、デスキュラ人に囚われていたという異星人カリオナ星人に地球人は出会った。


彼らはデスキュラ星人と真逆の人種で従順でおとなしい性質をしていた。

地球連邦はまだ戦争が終わったばかりのこの時期に公表すべきではないとカリオナ人のことは伏せておく。

しかし、その中で5年間暮らしていた地球人の乙女がいた。

その名はファリア=C=パーシヴァル。

英国の王室関係の血筋にあたる貴族の娘。
ファリアの叔父に当たるアラン=パーシヴァル博士がガニメデ星の研究機関にいたのですぐに彼女は本人だと確認。

彼女のその5年間のことは公表こそされなかったが、地球に返される事になる。

叔父・アランと共に懐かしい地球の土を踏んだ。



彼女は戻ってきた早々、婚約者だったリチャードに新しい恋人がいることを聞かされた。



そしてファリアはパーシヴァル公爵家所有の古城・ローレン城で生活を始める。



5年半ぶりの実家は懐かしかった。

こんなに緑が美しかっただろうか…

彼女は穏やかな静かな日々を過ごしていた。

勉強したり、ピアノを弾いたり…

犬や猫と戯れ、馬と出掛ける。

そんな日々を。



帰ってきて1週間ほど経った頃、彼女は愛馬アロー号と遠乗りに出掛けた。

遠乗りといってもパーシヴァル家の領地内。

小さな森を駆け抜け、懐かしい丘に辿り着く。

そこは6年ほど前、婚約者の少年と思いを通じた事を感じた場所。

緑のクローバーの絨毯の上に腰を下ろし、瞳を閉じて思い出す。



あの日、自分はとても幸せだった…



目尻からつうと涙が流れる。

そんな様子を愛馬のアロー号が見ていた。

アロー号は静かにご主人の頬に顔を寄せる。

まるで慰めるように。

「ありがとう、アロー。」

彼女の子供の頃から一緒だったアロー。
6年ぶりに会った時、アローは彼女に頬をすり寄せた。
馬は賢い。
そして優しい…



静かに涙したあと、彼女は愛馬に乗って帰ろうとした。

そこに馬に乗った誰かがやってくるのが見える。

ここはパーシヴァル家の領地。
家の馬丁のオルソンが迎え来たのかと思った。

しかし そうではなかった。


やってきたのは隣の領地・ランスロット家の嫡男リチャード。




リチャードは遠くから見て誰かがいると思い駆け寄ってきた。

すると そこにいたのは懐かしい駿馬アロー号。

ファリアの愛馬だったことは憶えていた。

  (一緒にいるということは… まさか…?!)


慌てて駆け寄ると、彼女だと解る。

6年前と変わらない黒髪と白い肌。それに吸い込まれそうな蒼い瞳。

「君は…ファリア?」


突然の再会にお互いが驚く。


ファリアはオルソンでなかったことに気付いた時、誰が来たかわかってしまった。

「…リチャード。」

お互い大人になっていた。


しばらくの沈黙の後、彼女が口を開く。


「お久しぶりね、リチャード。」


可憐な声にリチャードは鼓動を早くしていた。

「あぁ、久しぶりだね…  一体どうして…?」


「…今は言えないわ。」

「何?」

「一つだけ言えるのは… あなたも私も大人になったって事。」

その発言に何も返せない。

「…。」


「そろそろ帰るわ。家の者が心配するから。」


ファリアは軽々とアロー号に飛び乗り、城へと帰っていく。




―翌日

リチャードは薔薇の花束と彼女の肖像画を持って城を訪ねた。

城の門番に彼は止められた。

「令嬢のファリアに合わせていただきたい。」


門番は執事に報告。


彼を招き入れたのは執事のジェファーソン。

2年ぶりくらいに会う彼に挨拶をする。

「久しぶりです、ジェファーソン」

「…どうぞ、こちらへ。」

彼が通されたのはいつもの応接間だったが そこにいたのは城主の父であり
彼女の祖父・ローレン卿。

「久しぶりだな…リチャード君。」


少し不機嫌そうな卿に向かって挨拶する。

「ご無沙汰しております、卿。」

「今日は一体、何用だね?」

「…あの、ファリアが戻っている事を知って、ここに来ました。」

ふうと溜め息をついて卿は言葉を発する。

「どの面下げてここに来た。」

「え?」

卿の言葉に棘を感じる。

「君はある女性を結婚すると言って連れ帰ったそうじゃないか?」

「はい。」

「何故、ここに来た?」

「昨日、ファリアと丘で会いました。」

「ほう。」

「話をすることも出来ませんでしたから…」

「そうか。しかし、孫娘に逢わせるわけにはいかん!」

「何故です?」

思いもしない言葉にリチャードは驚く。

「君はあの娘を諦めた、違うかね?」

的を突いた言葉に詰まる。

「新しい婚約者の娘を迎えたことは知っている…
しかも孤児院出身だというじゃないか。

それが悪い事だとは言わんが、君は自分の立場を解っているのか?

ランスロット家を、伝統を 血筋を考えるなら良い選択だとは私は思わん。

私の孫娘以上にすばらしい女性なら仕方がないと思うがね。」

答えに詰まるリチャード。

「悪いが会わせるわけにはいかんな。」


「!」


「お引取り願おうか?」

静かに激昂している卿の言葉に言い返せないまま彼は城を去った。


帰り道、両親や周りの人間に言われたことと卿の言葉がぐるぐると回っていた。








_________________________

あとがき(2004/8/22)

なんだかファリアの祖父・アレクサンダー=G=パーシヴァル=ローレン卿が勝手に喋る〜

厳格な御爺さんで頑固なのは解るけどさ〜。。。

そこまでいわんでええやないの!




(2015/03/24 加筆改稿)






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