Captive -1-







ここは木星の衛星・ガニメデ星


近年、デスキュラという外宇宙の異星人が侵略を進めていた。




この星に寄生虫の如く生息しているデスキュラ人達は先に開発を進めていた地球人を支配し、
乗っ取る事を目的としている。



西部地区の外れは地球人がまだ開拓をしていない地域でデスキュラが秘密基地を構えていた。


いくつもの施設の中に地球人を研究している部署があり
ここには拉致されてきた地球人が数多く囚われていて
研究目的の為に多くの地球人が殺されていた。



そんな中、一組の姉弟。
最初は幽閉の星デロスにおかれていた二人は
ぺリオスの手によってガニメデ星に連れてこられたことによって
姉弟にとっての悪夢が始まろうとしていた…





ここの研究のひとつ・人工頭脳コンピュータのための核として若い娘か子供が候補とされる。

姉弟は最有力候補。



「おい、こっちに来るんだ!」

「やだ!」

少年は抵抗する。

「弟に手を出さないで!」

姉は兵士と弟の間に立つ。

「なら、お前が実験台になるか?」

「私も嫌よ!」

「こんな事言ってますよ。」

兵士が振り向き言った相手はぺリオス。

冷徹な微笑で二人を見る。

「こいつらは姉弟か?」

「はい、そのようで。」

「ならば、娘!お前が実験体になってくれれば弟は解放してやろう。
…それならば、どうだ??」


「!!」

思いがけない言葉に姉は考える。

「姉さま。僕は嫌だよ!ここを出る時は姉さまも一緒じゃないと!」




まだ12歳の弟…

彼女はどうしても弟を助けたかった。

「…わかったわ。けど、確実に弟を解放しない限り、実験体にはならないわ。」


姉の決断に弟は驚く。



「姉さま!」


顔を覗き込んでくる弟の頭をそっと撫でる。


「お願い。私の言う事を聞いて。

…あなたはパーシヴァル家の跡取りよ。だから帰りなさい。

私のことは死んだと思って諦めるのよ。」


悲痛な面持ちを出さずに姉・ファリアは告げる。



「さあ、弟を解放してください!」

「よかろう。」


ぺリオスは姉弟を基地の出入り口に連れて行く。


「さっさと行け!」


弟は強引に外に出される。


ぺリオスに銃口を向けられ、弟は命からがらその場から走り去る。


「さあ、これでお前はコンピュータのコアとなるんだ。」


男に腕を引かれ、乙女は研究室の一角に連れて行かれる。








********************





その頃、ビスマルクチームは最近 西部地区で暗躍しているデスキュラ基地を探していた―




「よお、ぜんぜんわかんねぇのかよ!」

ビルがライトコンソールのシートから叫んでいた。


「こう範囲が広いとなかなかエネルギー反応も拾いにくいんだ。」

レフトコンソールのリチャードが答える。


「まあ、気長に探すしかなさそうだ。」

進児が二人をなだめる。


その時、リチャードのモニターにシグナルが出る。


どこかに生物反応。

「ん?  誰かが…走っている?」



リチャードがカメラのズームを上げるとそこには少年が映し出された。


「男の子…?」

マリアンが呟く。テンガロンハット越しにモニターを見るビル。

「そのようね。どうする、進児?」

「そうだな。とりあえず保護してみるか?」

「デスキュラの罠かも知れんぞ。」

リチャードの危惧もわからなくはなかったがこの先、街までゆうに200キロはある。
途中で倒れるのが関の山。

「しかし、このままじゃ あの子は死んじゃうぜ。」


「ビスマルクマシンが動くと奴らに気取られるかも知れんな。
…僕が行こう。」

リチャードは進児に進言する。


「そうだな。その方がいいか。
…リチャード。   頼む。」


「了解。」

リチャードはドナテルロで飛び出して行った。







リチャードが少年に近づくと向こうも気付いたようだった。


「助けて!」

「坊やは何処から来たんだい?」


「あっちのデスキュラ基地。」

「!   本当に?」


「お願い!姉さまを…  姉さまを助けて!!!」

涙ながらに少年は懇願する。。


「解った。とりあえず事情を聞こう。」


リチャードは少年をドナテルロに乗せ、ビスマルクマシンへと戻る。


少年は青年のヘルメットに自国の国旗があるのを見ていた。



ビスマルクマシンに着くとリチャードはヘルメットを取って少年に素顔を見せる。

少年はその顔立ちを見て 思い出していた。

「まさか…リチャードさん??」


「僕の名前を知っている君は誰だ?」

リチャードも少年をまじまじと見る。

「僕、ステアだよ!  アリステア=パーシヴァル。」

「!!!  じゃあ、君の言っている姉さまってまさか…ファリアなのか?」


「そうだよ!急がないと姉さま、殺されちゃう!」


「なんだって!?」



なかなかブリッジに戻って来ないリチャードの様子を3人は見に行く。


そこで目にしたのは少年と会話しているリチャード。


「どうしたんだ?」

のんきにビルが問いかかる。


「大変な事になっているんだ!」

尋常でないリチャードの様子に3人は驚く。


「だから、どうしたんだ???」

進児が叫ぶと彼は冷静さを取り戻した。

「あ、あぁ、すまない。  実はこの少年は僕の知っている子だ。」


「なんだって?!」

3人は驚愕する。


「リチャードさん、早く行かないと…姉さまが …姉さまが…」

半べそをかく少年にマリアンが優しく声を掛ける。


「お姉さん?  お姉さんがどうかしたの?」


「姉さま、僕を逃がす代わりに…実験体になるって…」

「何?!」

4人はその言葉に叫んでいた。


「何の実験なんだ?」

素朴な疑問をビルは抱く。


「人工頭脳の…コンピュータだって …」


「早く行こう!」

リチャードは進児とビルに向かって叫ぶ。

「そうだな。マリアン、その子と留守番を頼む。」


「了解!」







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(2004/8/31)
(2005/7/3加筆改稿)
(2014/03/24加筆改稿)

あとがき

夢の中でファリアの弟アリステアが叫びまくるので書きました。

「姉さまを助けて!」

これが今回のテーマ??かも。





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