believe in fate-1-
僕には恋人がいる。
4月に婚約したばかりの幼馴染の…ファリア。
7月に入りお互い夏の休暇に入って、実家の城へと戻った2日目……
二人で遠乗りに出た先で突然の大雨。
僕は彼女の手を引いて、かつての大叔父の邸で雨宿りした。
彼女は… 王立音楽院で大人の男の先輩たちに付きまとわれ、
怖い思いをしていたことを告白してくれた。
「私… いつか、襲われるのじゃないか…犯されるのじゃないかって
怖かったの…」
震えながら僕に抱きついてきた身体は華奢で…まだ少女の面影が宿っていた。
「私… リチャードなら怖くない… 私の初めてを捧げるのはあなただって…
決めてるの…」
サファイアの瞳に涙を浮かべ、そう告げられた時、僕の決心は弾け飛んだ。
"結婚するまで抱かない"
二人が同じ学校の高等部にいた頃… 何度か機会はあったけれど至らなかった。
僕が暴走しかけた事もあったが、ブレーキをかけていた。
だから、これからもそうしようと思っていた―――
愛しい彼女の切なる願いを聞いて僕は……
華奢で可憐な少女の彼女を生まれて初めて強く強く抱き締めた。
痛みと苦しみに耐え、僕に輝く笑顔を見せて微笑んでみせた。
僕を受け入れた彼女が可愛くて愛しくて…
"ファリアだけを一生愛する"
僕の心は彼女への想いで溢れていた。
上手く言葉に出来なくて、何度も何度もくちづけた。
「大好きよ…リチャード。」
そう囁かれるだけで、身も心も喜びに震える。
彼女の細い指先が僕に触れるだけで、心地いい。
初めて肌を合わせてから5日間… ずっと毎日"遠乗り"と言って二人で大叔父の邸で愛し合っていた―――――
あの日から7日目―
彼女は両親と弟とともに家族旅行へと行ってしまった。
僕も昨年行った、ガニメデ星へ。
何故か見送りの時、不安がよぎった…
けれど彼女も家族もそんな僕をよそに旅立っていく――
見送った午後、僕は一人で邸に来ていた。
彼女の肌の香りとぬくもりが残っている気がして、ひとりベッドにいる。
目を閉じて、やわらかな肌の感触とくちびるから漏れる甘いため息
シーツの上に乱れる黒髪、僕の名を呼ぶ時の甘ったるい声を思い出していた。
全身が熱くなる―
恋しくて すべてが欲しくて
彼女をヒトツになった時の幸福感と充足感…
もう他にいらないと叫びたくなる。
「今、君はどのあたりにいるんだろうな…」
ふとシーツの上に彼女の長い黒髪が残っていた。
そっと僕は指に絡める。
僕は窓の外の夕陽が沈んで行くのに気づく。
残滓の空の下、愛馬キング号に乗ってランスロット城へと戻った。
残酷な宣告が待っているとも知らずに――――
to -2-
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(2005/8/19)
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