away -9-
―後日
学校内のカフェで友人のマドモアゼル・シューヌとエンマもこの話題を出してきた。
「実のとこ、どうなのよ〜??」
「そうよ〜、友人って感じじゃないわよ。」
二人の鋭い眼を受け流すファリア。
「え… お友達。クラスメイトだわ。」
「ホントにぃ?」
にやにやと笑顔で女友達が突っ込んて来る。
「ホントに? 少しくらい、好きなんじゃないの?」
それでもファリアはいたって普通に応える。
「んー…そうね。言われてみれば、なんだかリチャードに雰囲気が似てるかも…
髪の色も同じ感じの金髪で、瞳はグリーン…でもユーゴの方がオリーブがかって見えるわね。」」
「リチャードって婚約者でしょ?」
「そうよ。彼が音楽するタイプだったら、線が細くて、あーゆー感じかも。
実際の彼ってインテリなアスリート系だから。」
ファリアの発言にきっぱりと返すジューヌ。
「じゃ、それってユーゴの中に彼の影を見てたって事??」
指摘に妙に納得する。
「そうかもしれないわ… 」
「ある意味、残酷ね。ファリア。」
「え…??」
ジューヌの言葉に困惑の顔を向ける。
「少なくともユーゴはファリアに気があるわよ。
押してこないとは思うけど。」
「助けたかっただけなのに、おせっかいだったかしら?」
3人の乙女たちは食堂のテーブルで溜息をついていた。
「そんなことないよ。」
「「「え?!」」」
3人が振り返ると、トレイを持った少々困り顔のユーゴが立っていた。。
「マドモアゼル・ファリアの申し出がなかったら、僕は金賞になんて縁がなかった。
自信もなかった。
だから感謝しているよ。
ありがとう、マドモアゼル・ファリア。
確かに君に恋人がいなかったら立候補したかったのは事実だけど。」
さわやかな笑顔を浮かべて、彼は席に着く。
「これからも同じピアニストを目指す仲間であり、
ライバルだ。
そこんとこ、よろしく。」
そうして4人はピアノ談義に花を咲かせていた。
******
―リチャードが旅立って、約1ヶ月が過ぎようとしていた。
アパルトメンのメイド頭・マリエル夫人が帰宅したファリアを出迎える。
「おかえりなさいませ、お嬢様。」
「えぇ、ただいま。」
「あの…お嬢様あてにお手紙が届いております。」
トレイに載せられた封筒を差し出してくる。
「そう、ありがとう。 一体、誰からかしら…?」
手に取り、差出人の名を見て驚く。
「…!? リチャード!!」
ガニメデ星からなのでランスロット家の封蝋はないが
彼の直筆だとすぐわかる。
慌てて自室へとかけていく。
ライティングデスクの引き出しからレターオープナーを取り出し、
封を切る。
「Dearest Faria.
元気にしているか?
旅立ったばかりだというのに、もう君が恋しくて仕方ない僕がいるよ。
一日でも早く、敵を撃退して、帰りたいけど、当分、無理そうだ。
ガニメデ星に着いて早々にチームメンバーと合流する事が出来たよ。
不思議な事に気がつけば4人そろっていたんだ。
僕以外のメンバーは3人だと聞いてはいたけど、
個性的なメンツがそろっている。
リーダーは メインコンソールを受け持つ日本人・カーレーサーで
宇宙飛行士訓練生だった17歳の輝進児。
ライトコンソールを担当するのは米国人・ガンマンで
ブルーインパルス所属だった16歳のビル=ウィルコックス。
リアコンソールは連邦政府高官のルヴェール博士を父に持つ
フランス最年少・女性科学者の15歳のマリアン。
ちなみに僕はレフトコンソール。戦闘支援・情報処理とかを担当している。
それぞれに得意の分野のスペシャリストだから
初めてのマシンをなんとか動かして、デスキュラ星人を倒した。
けどこれから先、どれだけ戦わなければならないのか、正直 僕には解らない。。。。。
ビルと言う奴は典型的な西部のアメリカ人で、いたって軽い。
女の子を追いかけまわしたりしているよ。
僕とは正反対のタイプだ。
だからトラブルメーカーでもあるんだけど、ムードメーカーになりそうだ。
マイペースな奴ではあるがなんとか付き合って行けそうだ。
進児はビルとはまた違って、冷静さの内に秘めた情熱型ってタイプだから
僕と少し似ている部分がありそうに思う。
正直すぎるきらいもあるが…
いかにも日本人って感じだよ。
マリアンは紅一点。
プラチナブロンドのロングヘアで可愛いパリジェンヌだ。
すぐに解ったけど、彼女は進児を好きみたいだ。
彼女に聞いたところによると、父親同士が親友だったそうで、幼馴染ということらしい。
僕と君の関係に似てるけど、今のトコ 進児はマリアンの気持ちに気づいてないようだ。
鈍い奴…(汗)
ファリアはどうしてる?
王立音楽院で頑張っているのか?
地球上同士ならメールでやり取りも出来るだろうけど、
ビスマルクマシンからは個人的なメールが出来ない仕様になっている。
そのため、君に手紙を書くことにした。
多少のタイムラグがあるが、こうして君に近況を知らせたい。
僕への手紙は、ガニメデ星連邦軍本部基地宛てに送ってくれると嬉しいな…
こうして離れていても、君への想いは変わらない。
また、逢える日を楽しみに…
君を愛するリチャードより。」
読み終えると、便箋を抱きしめていた。
(ありがとう、リチャード…)
彼がガニメデ星で元気に仲間たちと過ごしているのを知って、安心した。
「返事、書かなきゃ。 あ…でも、写真を同封したいし、新しい封筒と便箋を買ってこなきゃ。
明日の学校帰りに買うとして、明後日くらには揃えられるかしらね…」
ふうとため息をつく、ファリアがいた。
***
―次の日
音楽院からの帰り道、いつもは
この日は違う。
クラスメイト・クラリスに教えてもらったお洒落な文具が揃うという店に向かう。
割とすぐにお店を発見できた。
店内に入ると、パリっ子愛用の文具や雑貨が置かれている。
「えっと…便箋と封筒…」
初めて来た店だからぱっと見で見つけられずにいたから
店員に聞いてみる。
「あの…便箋と封筒って、どちらに?」
「あ。はい。こちらです。」
案内された先は一角にたくさんの種類の
定番タイプ、お洒落なタイプ、可愛いタイプ、クールなタイプ。
アールデコ調なもの。ルーブル美術館をモチーフにしたものなど。
どれをとってみても可愛くてどれも欲しくなる。
「あ…どうしようかな?? 写真も入れたいし、ちょっと大きめの…」
そうしていくつかチョイスして、買いそろえる。
写真は厳選して選んでみた。
昨晩のうちにデビューパーティの4枚は焼き増ししてもらっていた。
最近に行った社交界のパーティのもシャルロットに頼んでデータをもらって、焼いておいた。
今日、学校でクラスメイト達と撮影させてもらったから、自宅のプリンターで出しておく。
何十枚もの写真の中から選んだ7枚を同封する事に。
いざ、便箋に向かうと、どう書こうかなと考えてしまう。
「とりあえず近況報告よね。
パリに移ったって知ったら、びっくりするかしら…?」
ライティングデスクに向かって、書き始める。
「Dearrest Richard.
ガニメデ星からのお手紙、ありがとう。嬉しかったわ。
あなたがみなさんと元気に過ごしているのが目に浮かぶようだわ。
いつか…進児さん、ビルさん、マリアンさんに会える日が楽しみよ。
私、あなたがガニメデ星へ旅立ってから、パリで社交界デビューしたのよ。
お父様、お母様、お爺様、お婆様に伴われて。
そこで様々な方と知り合えて… すごく仲良くなったの。
街でショッピングしたり、お茶したり、パーティに出席したり。
友達になったフランス貴族のジュリエット、シャルロット、。
米国人のシャーリー、ジュディはすぐ親しくなったのよ。
それからパリ在住の同世代の社交界の仲間に紹介されたから
週末は10人〜20人くらいでパーティに参加したりしているの。
それからね、私、親しい友人も出来た事だし、心機一転もあって
パリにしばらくいる事にしたの。
だから王立音楽院は中退して、パリ国立高等音楽院に編入したの。
お婆様のお口添えもあって…
そこでもピアノ学科のお友達も出来たわ。
だから平日は学校で週末はパーティとかで誰かと一緒なの。
今、私、淋しくないわ。
大丈夫だから、心配しないでね。
次にあなたに会った時は素敵なレディに立派なピアニストになってみせるわ。
リチャードが怪我などなく無事に帰ってくる事を祈ってます。
あなたを愛するファリアより… 」
***
ファリアはリチャードからの手紙に書かれていた通り、ガニメデ星連邦軍本部基地宛てに送る。
しかし、彼の手元に届くのは当分先のことであった。
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(2015/04/30+09/07)
あとがき
やっとこ彼からの手紙で出現。
マジ、ファリア主人公!!
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