away -14-






さすがにクリスマス休暇は1週間、スコットランドのローレン城に帰る事に。

勿論、子猫のヴィスを連れての帰郷。

それと、家族みんなにパリで買ったクリスマスプレゼントをたっぷり用意して。



そんな中の一つ… リチャードのために 用意したのはフランス製のカフスボタン。

今年は贈る事が出来ないので、自分で持っておく。

次に彼に会ったときに渡そうと決めて、引き出しの奥にしまわれた。





リチャードはリチャードで地球に帰れない。
ガニメデ星でクリスマスを迎えていた。

もちろん、ビスマルクチームのメンバーとドメス将軍の邸でホワイトクリスマスを迎える。

胸に彼女への思いを秘めて……




******


―年が明けて
ウィーンのピアノコンクールでファリアは金賞を取る事が出来た。
一番に彼に報告したかったけど、出来ない事がとても悲しく感じていた…。

手紙で報告する時に コンクールの映像を入れたディスクを同封する。


リチャードはリアルタイムではなかったけれど、彼女の姿を見ることが出来た。
本当なら、抱きしめてキスして、おめでとうと言いたいけれど、
それが出来ない……

ガニメデ星にいるから。


次の手紙でおめでとうと綴る。




コンクールが終わると、日常に戻ることに。。


社交界の友人・ジュリエットがパリ・ディズニーに行こうと誘ってきた。

近場なのに1泊2日の女子旅。

乙女4人で楽しい時間を過ごす…



*****

リチャードは激しい戦いの中にいた。

毎日毎日、デスキュラ人たちとの戦い。

緊張感もあるが、ビルがいつも空気を和ませる意外なムードメーカーになっていた。

自分とは180度違う意見を持つこともあるビル。
進児は日本人として基本的に真面目な熱血漢。


たまに進児とビルが衝突する事もあるのでその時は自分が止める役目だと認識していた。


3段ベッドの最上段で眠りに着く時、ファリアのフォトフレームにキスするくらいしか出来ない。。。。

毎日、忙しく慌ただしく過ごしていた。

ある意味刺激的な日々を。。。。







*****


―ファリア・パリ在住 4か月


ずいぶん生活にも慣れ、余裕も出てきた。

英国にいた頃の友人とは全く違うタイプの友人たちとの日々を過ごす。

そんな中、1本の電話。

「アロー?? ファリア、元気??」


「え?! リズ?? 今、どこにいるの??」

声の主はプロのテニスプレイヤーを目指して、英国のテニス名門校に進学した
プライマリースクール時代からの親友・エリザベス=マーシャル。
メールのやり取りは細々と続いていたが、半年以上会っていない。

「久し振り。その声、元気な様ね♪」

「えぇ、おかげ様で。
ところでリズ、凄いじゃない!! 世界ランクを一気に10も上げちゃって!!
おめでとう!!」

ファリアの言葉にリズも嬉しくなる。

「ありがとう…ファリア。メールしてなかったのに、チェックしていてくれたんだ。」

「勿論よv 当たり前だわ。
そういえはエリックも頑張っていたわね。
この間の日本人相手の試合にてこずってたようね。」

「そうなの。
あいつ、すんごい落ち込みかけたんだけど、
宇宙のリチャード君はもっと大変なんだよってハッパかけたわ。」

リズの発言に思わず笑う。

「確かにそうね…確かに一番、効果あるかも。」

嬉しそうな でも、憂いを帯びた親友の言葉にリズは一瞬、
彼の名を出した事を後悔した。

「ね、ところでさ、実は私、今、パリの合宿所にいるの。
だから、会えない?? スケジュール空いてる日ってある??」

リズの言葉に微笑んでいた。

「空いてなくても空けるわよ。リズの方こそ…」

「ん〜そうね。ファリアも平日は音楽院だし、週末にランチしない??」

「え?? 大丈夫なの??リズ??」

「うん。大会前だけど、会いたいのよ。ダメ??」

強請る親友の声に笑顔で返す。

「解った、空けておくわ。
家に来る?? それか外で待ち合わせる??
それとも私が合宿所まで行きましょうか??」

「う〜ん… ファリアのその日の予定は他にあるの??」

「一応、夜に社交界のパーティがあるくらい。
だからランチは全然問題ないし。
って、リズもパーティに行く??」

「へっ!?」

突然の申し出に息が一瞬止まったリズ。

「パリに来てずいぶん友達とか知り合いが増えたの。
リズに紹介したいの…ダメかしら??」

「え…ホントに? 私まだ、パリの社交界にデビューしてないんだけど(汗」

「マナーに反するのかしら…?? 
でも確か、中に来年デビューとかって人、いたわ。」

「じゃ、大丈夫かしらね?? 同伴させてもらうわ。」

「外でランチにして、家でドレスアップして行けばいいわね。」

「ありがとう。そうさせてもらうわ★」


二人はおよそ半年ぶりに、しかもロンドンではなくパリで再会を果たすことになる。






*****


カフェで二人は久々に顔を合わせた。

ひしと抱き合う乙女たち。

「ファリア…久しぶりね。少し痩せた??」

「大丈夫よ。リズこそずいぶん日焼けしちゃって。
ちゃんとお手入れしてる??」

「ま、なんとかね。」

照れくさい顔を見せるリズ。

「それに身長… また伸びたの??」

「なんで解るのよ。今、174センチ。」

「羨ましいな…」

「何言ってんのよ?! 
テニスプレイヤーとしてはありがたいけど、
女子的にはファリアくらいの方が全然可愛いんだからね!!」

「そ、そうなの… お互い、ないものねだりなのね。」

「そーゆーこと!!」



近況報告の後、他愛のない会話が3時間ほど…

カフェで過ごした乙女たち。


5時にはファリアの住む高級アパルトメンに向かう。

二人してドレスアップして、車で送ってもらう。









今日のパーティはフランス人デザイナー フローレ=シャルディ二ー夫妻の結婚50周年祝い。

夫君のミッチェル=メルウァス氏は80歳。
フローレ夫人は78歳で仲睦まじい二人を祝って大勢の客が招待されていた。

ファリアのアドバイスもあってリズもシャルディ二ーのドレスで参加。



会場に着くと招待客でごった返していた。

老若男女が入り混じっている。


邸全体に招待客がそこらで歓談している。

「えっと…何処にいるのかしら?みんな…」


ファリアはきょろきょろと周りを見回すが、いつものメンバーが見当たらない。

「どこにいるか、聞いてないの?」

「うん… あ!? いた!!」


大きなホールに仲間を見つけた。
ウエルカムドリンクを片手にみな談笑している様子。

「アロー。みんな、ごきげんよう。」

ファリアが声をかけると、一斉に皆が振り返る

「いらっしゃい、ファリア。
今夜はおばあちゃんたちのために来てくれて、メルシー。」

ファリアに声をかけたのは今日の主役の孫に当たるマヌエラ=シャルディ二ー。
もちろん、祖母のデザインのドレスを着ていた。

「こちらこそ。 ね、今日はみんなに紹介したい人がいるのよ。」

ファリアの後ろに立っている長身痩躯のアンバーの瞳の乙女の姿。

「って、後ろの彼女のこと?」

「そう。私のプライマリースクール時代からの親友・エリザベス=マーシャル伯爵令嬢よ。」

「って、あれ?? 君、プロテニスプレイヤーの??」

リズの事を知っていた男子が声をかける。
長身でややがっしりした体躯。
亜麻色の髪にオリーブグリーンの瞳で笑顔がまぁまぁチャーミング。
女の子受けがよさそうなタイプに見えたリズ。

「え?私の事、ご存じ??」

「俺…君と同じで英国出身。一応、イングランド貴族なんだ。
フェンシング選手のヒュー=エドウィン。よろしく★」

「なんか、聞き覚えあるような…ないような…」

目の前の彼を見て、感じたデジャヴ。
そんなリズに話しかけるファリア。

「あるのよ、リズ。」

「ん??」

「リチャードと何度も対戦して、毎回負けている相手。
だからいつも2位の…」

「あ〜それでか!!」

ファリアと一緒に幼い頃からリチャードのフェンシング大会を見に行っていた。
いつも悔しげに表彰台の横に立っていた顔だと思い出す。

「やっぱ、言われ続けるのね、俺…」

うなだれるヒューにファリアとリズは言葉を続ける。

「じゃ、今は英国内1位なんだよね??」

「そうよね。彼が宇宙に行っちゃってるから、世界選手権とか優勝候補よね??
と、いうかこの間のヨーロッパ選手権は優勝してたじゃない。」

二人の言葉にゲンキンに反応する。

「ま、彼が帰ってくるまで、俺が英国1位を守っておくさ。」

「「頑張って!!」」


盛り上がっている3人に近づく3人のメンバー。

綺麗なプラチナブロンドでスレンダーな美少女と二人の大柄な男子。

「ね〜、私も混ぜて!! 私はフィギュアスケート選手オデット=ボーヌよ。」

「俺はサッカー選手でスウェーデン人のブルーノ=クランツ。」

「で、僕が プロスキーヤーのシャルロ=ド=ヴァン。フランス貴族だよ、よろしく。」

突入してきたメンバーの自己紹介を聞いてファリアもリズも微笑んでいた。

「この場にいるアスリートがこれで5人になったわね〜。」

ファリアが言うと皆同感。

「そうね。これで今の仲間、22人目!!」

思わず叫ぶ、オデット。

「仲間??」

初めて言われたリズが聞き返す。

「そう、今、パリにいる同世代の社交界仲間というか… 
って、帰国してるメンバーもいるわね…(汗」

オデットが応えてくれたが、ちょっとあいまい。
ファリアがフォローする。

「そうね。米国人3人とイタリア人のカタリナも帰ってるし、
仕事で今日のパーティに来てないメンバーもいるわね。」

「まぁ、でも大体このメンバーで集まってパーティとかに参加してるもんな。」

シャルロがさらに続けていた。

「ファリア〜、いないメンバーの事、リズに教えてあげといてよ〜。」

「了解〜。」

オデットに言われているファリアの顔を見る。

「ねぇ、全員、覚えているの??」

「もちろん。 大体、幼い頃から母に人の顔と名前はしっかり覚えなさいって言われてるし。」

「やっぱ、大変ね、社交界って。」

「もっとたくさんの人の事、覚えなきゃならないのよ〜。リズ。」

ファリアの言葉ももっともだった。
ロンドンだろうがパリだろうが、社交界デビューとなると相応の人物データを頭に入れなければならない。

「確かにそうね… みなさん、よろしく!!」

「「「「「お〜!!!」」」」」

皆がリズの言葉に返していた。
もちろん、受け入れられた証拠。



***


みんなドリンク片手に談笑している。

リズに声をかけたのはスウェーデン人のブルーノ=クランツとイタリア人のアンドレアス=ダラーラ。

二人に声をかけられた時点でファリアとオデットはさりげなく少し離れた。

「君くらい、身長あるとモデル出来そうだね。」

にっこりと笑顔で近づいてきたアンドレアス。
長身痩躯で少し軽い感じはするが、野暮ったくはない、良く言えばイケメン。

「そう?ありがとう。でも顔が地味だわ私。」

「そんなことないよ。無駄に華があるよりいいよ。
メイクでいくらでも変えられるし、やってみない?」

「え?」

「僕、デザイナーを目指して勉強中なんだけど…
母が本国でデザイナーなんだ。」

「って、え? て、ことはイタリア・ミラノのダラーラ?」

何とか知ってるブランド名だったので問いかけてみた。

「そう!! よく知ってたね。」

「姉が愛用してるのよ、バッグと靴。」

「そうだったんだ。嬉しいな★ 英国の人に使ってもらえて。」

[俺の姉貴も使ってるぜ、アンドレアス。」

隣で立っていたブルーノも笑いながら言ってくる。

「ブルーノんちもかよ!!」

わははと盛り上がる3人。

その光景を見ていたファリアは男子たちと和気あいあいとしているリズを見て、安心した。
プライマリースクールの頃はいつも男子を寄せ付けない彼女だったから。

ファリアはファリアで違うグループで談笑していたが横目で見ていた。


そんな彼女が話題になる。

「なぁ、マドモアゼル・ファリアって、昔から ああなの?」

ふいにアンドレアスがリズに問いかける。

「ああって?」

「ん… 天然っていうか、なんつうか…」

なんとなく言いたい事を察して、リズは切り出す。

「まぁ、そうね… 私たちと少し感覚が違うわね。
なんせ女王陛下の外孫だし。
1000年以上続く公爵家の家柄で。
パーシヴァルってそもそも、アーサー王の円卓の騎士のひとりでしょ?
同じ英国貴族だけど、格が違うわ。」

「は〜…なるほど。」

「プライマリースクールではあんまり友達出来なかったわね。彼女。
同じ貴族でも格上過ぎてみんな遠巻きにしていた感じね。
親しくしていたのって限られるわ。」

「そうなんだ。
今はみんなとあんなに打ち解けているけど?」

「う〜ん… 彼女はある意味、高貴すぎる家柄だし、
それに独特の雰囲気あるし。
IQも高いから…」 

「って、めっちゃ頭いいって言う?」

「そう。一応、私もね。」

「「はぁ…??」」

きょとんとされてリズは説明する。

「私たちがいたプライマリースクールの半分はそういう子だって
あとから聞いたの。
だからファリアも彼女の許婚の彼もそう。
っていうか、彼は別次元だったわ。」

「なるほど、道理で。」

ブルーノとアンドレアスは妙に納得した。
彼女が仲間になってから聞いた、許婚リチャード=ランスロットの事。


今は地球連邦の特務で宇宙で戦っているという件。
彼の人となりはファリアとヒューから聞いた。

「それにファリアって、一応、8歳でビリヤードもチェスも国際Jr大会で優勝してるの。
タイトルも4年間保持していたわ。」

「マジで?」

「えぇ、あの子のお爺様が両方ともプロなのよ。
だから物心つく前から仕込まれてるの。
ご両親は普通だけど、祖父母が両方とも半端ないし。
才能の隔世遺伝を感じる人は感じるでしょうね、」

「そうだったんだ…」

「君も彼女も凄いんだね。」

自分まで褒められ、照れくさくなるリズ。

「まぁ、ファリアも私もありのままでいられたら十分よ。」

「才能豊かな二人なんだなぁ…
って、彼女の許婚のリチャード=ランスロットってのも、ガチで。」

「まぁ、そうね。 だから、ヒューは負け続けたんだよね。」

ぷっと吹き出し笑いあう3人がいた。

周りのメンバーが少々引くくらいに。




「お坊ちゃま方、お嬢様方、晩餐のご用意が整いました。
どうぞ中へ。」

執事がホールにいるメンバーに告げてきた。

奥の晩餐室に入ると100人近い招待客がテーブルに着く。


「紳士淑女のみなさん、
本日はミッチェル=メルウァスとフローレ=シャルディ二ーの結婚50周年のパーティーにお越し下さり、
ありがとうございます。」

盛大な拍手が起こる。

「これからもどうか二人を見守って下さい!! では、乾杯!!」

グラスを鳴らす音がそこらじゅうから響く。
一つのテーブルに50人ほどの招待客の晩餐が始まる。

ふたつのテーブル合わせて、約100名の食事が始まった。

例の若いメンバーは固まって テーブルについていた。

男性は燕尾服、女性はフォーマルなドレスの光景はきらびやかな世界。
女性のほとんどはシャルディ二ーのドレスを纏っていた


華やかなパーティは一晩中続く。



女性たちは12時前に引き上げる。
美容に良くないと早めに切り上げる者もいた。

逆に男性のほとんどが朝までを過ごしていた。






***

パリ社交界では週末ごとにパーティがどこかである。
ファリアは親しくなった仲間たちと極力行くように心がけていた。

時々、祖父母、両親がパリに来るのでそこら辺は臨機応変にこなしていく。





ロンドンにいる時より、のびのびと過ごせている自分に気付いたのは
滞在3カ月を過ぎたころ――――


「女王陛下の外孫」という枷がないから、自由に振舞えるということもある。
リチャードが宇宙で戦っているというのに
自分がこんなに青春を謳歌していいのかと、自責の念に囚われた事もあった。

しかし、彼から届いた手紙を読んでいると、彼は彼で新しい自分を見つけた様に文面から察していた。


リーダー・輝 進児、ガンマンのビル、
ビスマルクマシン開発者でもあるシャルル=ルヴェール博士の娘・マリアン。


彼らともいずれは会えると思うと、楽しみではあった。

リチャードからの手紙で3人の様子が思い浮かんだから。


早く戦争が終わって、平和な世の中になって欲しいと願うファリアがいた。











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(2015/07/02+18+11/20&2016/01/11)






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