away -5-




―夜7時

スフェール男爵家所有のアンベール邸の晩餐室のテーブルには8人が付いていた。

男爵とサフィーナ夫人、それに兄・ジョルジュとシャルロットと4人の乙女たち。

「久し振りだな、こんなににぎやかな夕食は。」

自分の娘と4人の乙女たちを目の前にして、男爵が呟く。

「ホントね。みなさん、また来て下さいな。」

にっこりとほほ笑む・サフィーナ夫人にみな笑顔を返す。

「また機会があれば。」

ジュリエットが返していた。

「そうね、私たちは国に帰っちゃうし…」

他の3人は少し控え目に返していた。

「あ、でも私はまだしばらく、パリにいるわ。」

ファリアがポツリと返事していた。

「あ、じゃぁ、次は3人でショッピングとかもいいわね★」

シャルロットが提案するとジュリエットとファリアがうなずいていた。





にぎやかな晩餐が進んでいく。

さすが食の本場・フランス。

舌鼓を打ちっぱなしのお料理が続く。

ファリアがアメリカに帰る二人に尋ねる。

「ね、二人は西海岸か東海岸にお家があるのかしら?」

「どっちにもあるわよ、私たち。」

「そうなんだ〜、凄いわね。」

「ファリアんちだって、英国内だけじゃなく、ここパリにもあるじゃない。」

「まぁ、そうなんだけど。」

ハイソサエティーな会話が続いていた。

「うちは祖父がハスラーでもあるから、時々、ロスやラスベガスに行くのよ。
たいていホテル暮らしなの。
私が選手権に出たときもそうだったし。」

ファリアの発言に思わず突っ込むシャーリー。

「へ? あなた、選手権て、何?? ピアノだけじゃないの??」

「あ、私ね。祖父の手ほどきでビリヤードとチェスをしていたの。
一応5歳から12歳くらいまでジュニアの選手権に出てたわ。
今はピアノに専念しているから、そっちはほとんど練習してないし。
選手活動してないから…」

思い出したようにスフェール男爵が相槌を打つ。

「そうだった。君の祖父に当たるローレン卿はプロのハスラーで活躍されているね。
貴族院の議長も早々に退任されて…」

「そうなんです。議員よりプロのハスラーとして生きたいと言って…」

スフェール男爵もたしなみとしてビリヤードをしているからこそ、知っていた。


つい、ジュリエットが呟く。

「ファリアんちって凄いね。
おばあ様がハーピスト。おじい様がハスラー。他にも誰か?」

「ん〜そうね。5歳年下の弟がフェンシングと馬術の選手ね。
フェンシングで五輪を目指すって言ってたわ。
イートン校も飛び級してるし、早めにオックスフォードに行くんじゃないかしら??」

「凄いわね〜… ファリアの弟か〜 絶対可愛いんだろうな〜v」

ジュディがファリアの弟を想像してみた。
ばっさりと言い切る彼女がいた。

「そんなことないわよ。生意気よ。
まぁ、でも彼の影響を受けてアーチェリーからフェンシングに転向したのよ。
イートン校も彼の影追っかけて、ずいぶん頑張っているようだけど。」

ファリアの返事をみんな聞いていた。

「彼って、例の?」

「そう。彼…馬術とフェンシングで五輪に出ちゃってるの。」

「うっわ、マジで彼って凄いのね。で、もちろん大学はオックスフォード?」

「そう、17歳で院まで出ちゃったのよ。」



「で、今は?」

事情を知らされてない男爵が問いかけた。

「地球連邦のルヴェール博士に要請されて、今は特務の仕事で宇宙に。」

「ほお。こりゃ、大変だね。相当、優秀な人物なんだ。
彼は…君と同じく貴族だろう?」

「えぇ、ランスロット公爵家の嫡男です。」

男爵は思いがけない名を聞いて驚く。

「さすが、パーシヴァル家のご令嬢だね。
ランスロット家も名門中の名門。
同じアーサー王伝説の英雄の末裔同士とはね。」


「確かにそうね。ランロット卿って王妃と恋仲になっちゃった騎士で
ファリアんちのパーシヴァル卿は聖杯伝説に関わる騎士よね?」

シャルロットが父の言葉に足すように言っていた。

「そうなのよ。
しかもパーシヴァル家って、独特の風習とかあって、大変なのよ。
料理やお菓子の秘伝のレシピとか使ってたりするし。
微妙に改良とかはしているみたいなんだけど。
私は母より祖母に色々と教えてもらってたの。

母は慈善事業とかで忙しくて、親子だけど毎日、顔を合わせるってことも少なかったから。
私は祖母と乳母に育ててもらったようなものなのよ。」

ファリアの発言にシャーリーが同意を示す。

「私も同じようなものよ。
両親は仕事だパーティーだっていって、全米中を回っていたもの。
私の事なんか構ってくれなかったわ。」

ジュリエットもふっと淋しげな笑顔。

「そうね。うちもそうだわ。そっか、私たち、似た者同士みたいね★」

ファリア、シャーリー、ジュリエットがくすりとほほ笑み合う。

「これからもよろしくね♪」

カチンとグラスを鳴らす、3人がいた。


そんな彼女たちを優しい瞳で見ていたシャルロットとジュディ。







to -6-

_______________________
(2015/04/07・08・12)

あとがき




to Bismark Novel

to Novel

to home