away -2-
―パリ16区にあるパーシヴァル公爵家所有の高級アパルトメンに母娘は到着。
もちろん、最上階のペントハウス。それとワンフロア下も所有している。
久々にずっと娘と一緒にいて気づいた事があった。
「とりあえず少し体重を戻さないと、ドレスが緩そうね。」
「もう用意してあったの?」
「もちろんよ。2か月ほど前のあなたのサイズでミロワールにオーダーしておいたの。
リチャード君が地球から離れてしまうことは想定外だったんだけど。
エスコートも頼みたかったのに。残念ね。」
「それにしても…ミロワールって今 話題のデザイナーよね?」
「もちろん。公爵家の娘らしく、いいドレスを着ていかないと。」
なかなかオーダーメイドも受け付けてくれないと
噂のパリコレデザイナー・ミロワールを手配してくれていた母に感謝する。
「ありがとう、お母様。」
「いいのよ。
アクセサリーは問題ないけど、ドレスは再調整していただかないといけないわね。」
ファリアは用意周到な母に感謝感激していた。
それと何時も自分を思ってくれていたことに。
母はいつも自分のそばにいないことが多かったから。
常に自分の世話をしてくれるのは乳母やメイドたち。
元王女の母が背負っている責務。そこから発生する公務。
その立場を理解したのはプライマリースクールに入ったころ。
理解はしたものの、いつも寂しさを感じていた。
だから、今ずっとそばについていてくれている事が嬉しかった。
*****
―パリ滞在3日目
何とか少し体重は戻ったものの、元には戻れずにいた。
元々、胃が標準より小さく小食であったため。
ドレスの再調整は大急ぎで施された。
明日はパリ・社交界デビュー。
パーティー出席のため父もパリに来た。
親子3人だけで一緒に過ごすのは弟が生まれて以来、初めてのこと。
夜の晩餐は穏やかに過ぎていく。
量は相変わらず控えめだが、ちゃんと食事をしている様子の娘を見て、父が言う。
「ずいぶん、元気になったようで安心したよ。」
父の言葉に心配と思いやりが見えた。
「ありがとう、お父様。
…お父様にも心配かけて、ごめんなさい。」
父に向かって頭を下げる。
「いや、いいんだ。気持ちは解る。
愛しい人と離れるということは。」
「え?! お父様とお母様にもあったの?」
「あぁ、あったよ。」
「そうね…懐かしい話だわ。ちょうどあなたたちくらいの年頃のころのことよ。」
両親にそんな時期があったと初めて知った。
そういえば馴れ初めも聞いたことがない。
「そうだったのね。 ね、どっちが先に好きになったの?」
率直に両親に聞いてみる。意外な返事が返ってきた。
「私よ。」
意外な事に母からだと知って、驚く顔を見せる。
「お母様から?」
「キャンパスでね、かっこいいなぁって思ってたの。
私は私で周りに取り巻きがいたんだけど、この人は我関せずって感じで…逆に気になったのよ。」
「あ…そうだったな。」
二人して当時を思い出したような瞳を浮かべる。
王女に密かに片想いしていた父。
公爵家の跡取りであるアーサーに密かに思いを寄せていた母。
それがどうして夫婦になれたのか、初めて聞かされる娘がいた。
*****
デビュー当日、スケジュール調整をして、間に合ったと祖父母・ローレン卿夫妻もパリに入った。
―オテル・ド・クリヨン
華やかなドレスを身に纏った乙女たちがデビューを迎える日となる。
王族・貴族の息女はもちろん、近年は有名な映画スターや高名な著名人。
大企業の令嬢たちが一堂に会する。
22人のデビュタントの集合写真が世界に配信される。
フランス 貴族令嬢 ジュリエット=シデル伯爵令嬢
アメリカ 財閥令嬢 プリシラ=ゴース嬢
ドイツ スポーツ用品メーカー社長令嬢 ナオシーナ=ヘンデル嬢
イタリア 政治家令嬢 エリス=ガットーニ嬢
ドイツ 財閥令嬢 マリア=セルシオ嬢
イタリア デザイナー 令嬢 レナ=クロイツ/ルナ=クロイツ姉妹
スイス ピアニスト 令嬢 ティナ=ルーディ嬢
スイス 芸術家 令嬢 フォスティーヌ=カリスナ嬢
イタリア 映画女優 令嬢 ローザ=プランドリーニ嬢
フランス 映画監督 令嬢 リネア=ダルク―ル嬢
ドイツ 政治家 令嬢 リュヌ=ド=アーレンべルヌ嬢
アメリカ 映画女優 令嬢 ジュディ=ドカール嬢
アメリカ 政治家 令嬢 シャーリー=ロッシ=マクガイバー嬢
スペイン 政治家 令嬢 アンヌ=スパレスト嬢
イギリス 映画俳優 令嬢 アリソン=ベーカー嬢
フランス ノーベル化学賞・学者 令嬢 サラ=コルトー嬢
ドイツ 映画監督 令嬢 リリー=オクデラ―嬢
スペイン 映画俳優 令嬢 エスメラルダ=ブスガドル嬢
フランス 貴族令嬢 シャルロット=スフェール男爵令嬢
イタリア 貴族令嬢 カテリーナ=グラナート伯爵令嬢
イギリス 貴族令嬢 ファリア=パーシヴァル公爵令嬢
錚々たる出身の家柄の娘たちが美しく着飾った姿で建ち並ぶと別世界。
その中でひときわ注目されていたのはファリア。
生来の清楚さはもちろん、ノーブルな空気を纏う彼女にみな一目置いていた。
みなただの貴族の娘と認識していない。
王室の血が入っている事を知っていた。
*****
ひとりひとりの写真撮影もある。
それも配信される用の。
それぞれにホール内のどこかでの撮影。
ファリアは両親と祖父母の5人と単独での写真撮影。
ホールの一角でカメラマンにシャッターを切られる。
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(2015/04/07)
あとがき
実は22人の令嬢のイラスト〜とか思ったんだけど、めっちゃ大変そうなので却下しました。
いつか描きたいですv