ardor -6-
ビスマルク国へと戻るべく、再び馬に乗って移動を開始する。
ただ…以前と違い2班に分かれての移動となる。
報告のためにと進児が軍の半分を率いて先行し、
皇太子と王女、ビル大佐は後をゆっくり目に移動する。
それは王女の身を気遣ってのコト。。
戻る道中、パルヴァ国も通る。
皇太子達は挨拶にと王城を訪れる。
もちろん、王女も一緒に。
約4ヶ月ぶりのパルヴァ城。
王女は感慨にふけっていた。
出かけたときとまるきり違う自分。。。
「久しぶりね、アリステア。」
「姉さま!!」
久々に逢う姉弟は抱き合う。
「姉さま… 幸せそうだね。」
「そう見える?」
「うん。
殿下に…愛されてるんだね。」
以前より姉の笑顔が輝いているような気がした。
そんな姉の顔を見て、弟も微笑む。
城を出て行ったときの姉の悲壮な顔とは全く違って見える。
「そうそう…アリステア、あなた…近々伯父様になるわよ。」
「は? 僕まだ13歳だよ? 何で??」
「あのね……
私、身ごもっているの。
殿下の子よ。」
「!? …だから伯父様なんだ。」
「えぇ。
今は2ヶ月目を越えたくらいなんですって。
まだ目立たないの。
でも順調だそうよ。」
「そうだったんだ。
姉さま…いえ、姉上、それにリチャード皇太子殿下。
おめでとうございます。」
「あぁ、なんだか照れ臭いよ。」
謁見室で3人は微笑んでいた。
国王代理であるホイットリー候も王女の懐妊に驚きつつも
微笑んでいた。
「殿下。
姉のコト…よろしくお願いします。」
「うむ。
必ず国では正妃にと思っている。」
「「えっ!?」」
アリステア王子だけでなく王女本人も驚く。
「あの…正式な婚約者がいらっしゃるはずでは…??」
「まぁな。
しかし ただの貴族の娘だ。
そなたはれっきとしたパルヴァ国王女。
身分が違う。
全然そなたのほうが未来の王妃の器だと私は思っている。」
王女はまた目を丸くする。
「私のことをそんな風に思ってくださっていたの?」
「あぁ。」
「姉上、頑張ってください。」
「…えぇ。頑張ってみるわ。
殿下のためにも、この子の為にも…」
4ヶ月ほど逢わないうちに弟が随分逞しく成長していると姉である彼女は感じた。
両親を失い、姉である自分も城を去った。
かなり淋しかったに違いない。
小さな少年だと思っていた弟が未来の国王となるべく大きくなっていくのを
嬉しく感じていた。。。。
3日ほど滞在した後、ビスマルク国を目指して出発する。
パルヴァ国からビスマルク国まで6つの国を通っていく。
内3カ国はかつてキュラ帝国に支配されていた国々。
その3カ国で皇太子一行は 歓迎され3,4日滞在することが多くなる。
少々つわりを起こすようになった王女をいたわり、皇太子はゆっくりと帰路を進めていく。
パルヴァ国を出て1ヵ月半後、やっとビスマルク国の国境内に入れた。
国内に入った途端、凱旋帰国した皇太子を一目見ようとする国民が集まってくる。
傍らにいる王女にみな見惚れていた。
ビスマルク国内ではあまり見ない漆黒の髪の美姫…
その王女がすでに皇太子の子を宿していると知ると
何かしら差し入れを持って宿屋を訪れる者があとをたたない…
結局、国境から1日で帰れるのに、3日掛かってしまう。
都を通り、王城へと戻ると凱旋帰国を果たした皇太子を出迎える王家一族。
彼はマントを翻し、王座のある大広間へと足を踏み入れた。
「陛下… 帰国が遅れ、申し訳ございませんでした。」
膝まずき、国王であるシャルルに頭を下げる。
「いや…構わんさ。
無事にこうして帰ってきてくれただけでなく…花嫁まで連れ帰ったという祝い事まで運んできたそなただ。」
「…それだけではありません。」
「何のことだ?」
「…ファリア王女がすでに私の子を身ごもっているということです。」
「!? …そうなのか? 聞いてなかったぞ?」
進児や他のものもわざとそのことを知らせずにいた…
「…そうか。
それではそなたからの書簡にあったパルヴァ国王女・ファリア姫を娶り
正式な妃にと望む理由は…そこにあったのか?」
「はい。
ずぐにでもあの貴族の娘との婚約破棄をして…
早く 姫のとの結婚を望みます。」
「…解った。
それでは姫本人に逢わせて貰えるのかな?」
「はい。今、仕度をさせています。」
王女は旅用の簡素なドレスを着ていたので
城に着いて改めて着替えていた。
「王女様のお仕度が上りました。」
側近が彼に伝えに来た。
「うむ。通せ。」
「はい。」
大広間のドアが開かれると王女は王座に向かって歩き出す。
臣下や大臣達が壁際に控えていたのだが
その口からは溜息が漏れていた。
大陸一の美姫という噂は伊達ではなかった…
シンプルな蒼いドレスと金で縁取られた白のケープを纏った王女は
リチャード皇太子のそばまでやってきた。
その王女の姿に彼も喜びを感じる。
「陛下。…こちらがパルヴァ国王女・ファリア姫です。
姫、こちらが伯父・シャルル陛下だ。」
一段高い王座から国王は目を細めて告げる。
「うむ… よく参られたな。ファリア姫。
噂どおりの美しい姫のようだ。」
「お褒めのお言葉… 嬉しゅうございます。
改めて初めまして… 私、 パルヴァ国・国王の娘ファリアと申します。
どうか…よろしくお願い申し上げます。」
丁寧にお辞儀する王女に声を掛ける。
「あぁ、良い。
顔を上げよ。」
「はい。」
はっきりと王女の顔を見て息を飲む。
煌めくサファイアの瞳と漆黒の髪…
透き通るような雪肌…
まるで月の女神のように美しい乙女に目が奪われていた。
「…陛下?」
「…あぁ。 すまん。
つい見惚れてしまったな。
本当に噂以上に美しい姫だな。
…リチャード、良く射止められたものだ。」
ははは…と笑う国王を見て、少々ふたりは苦笑い。
「先ほど…リチャードから聞いたのだが、
すでに身ごもっていると。
大事無いのか?」
「はい。
お心遣い、ありがとうございます。
まだ少々、つわりがございますが…」
「そうか。
それでは、その腹が目立つ前に式をしてしまわないとな…」
笑顔で国王は告げる。
「!? あ、ありがとうございます…」
「陛下。…ありがとうございます。」
姫も皇太子も国王の言葉に嬉しさを覚えた。。。
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(2006/3/11+12)
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