ardor -4-
皇太子とビスマルク国軍のほとんどはキュラ王城を目指して出発した。
国境から半日ほどの距離。
さすがに敵国内に王女を連れて行くのは危険と判断し、
兵を40名ほど残して。
そもそもキュラ皇帝・ヒューザーは彼女を妾にと望んでいたことを考えれば当然の判断。
王女がいるという情報は敵側に漏れていた。
皇太子が出発をして30分も経たぬうちに キュラ帝国軍親衛隊が突入してきた。
圧倒的な数で兵士達はあっけなく、殺されていく。
「ここか…王女のいる天幕は。」
親衛隊隊長ペリオスはひとりごちて天幕に入っていく。
「誰ッ!?」
ジェシカが誰何すると見慣れぬ男が立っていた。
ダークグリーンの瞳を細め、男は王女を見つめる。
「ほう…そっちの乙女がパルヴァ国王女か…
確かに美しいな。
我が主の妾になる予定だったのになぁ…」
くっくっ…と不敵に笑う男の言葉にどんな立場の人間か解った二人。
「このッ!!」
ジェシカは剣を抜き、男に立ち向かっていくが
あっけなく昏倒させられてしまう。
「あぁっ!! ジェシカ!!」
倒されてしまった彼女に駆け寄り、抱き起こそうとする。
そんな王女をペリオスは見下していた。
「他人のことより、自分の心配をしたらどうだ?」
「え…!?」
清拭をしていた途中だったためにほぼ裸…
自分の危機的状況にやっと気づく王女。
「い、いやぁっ!!」
腕で胸を覆い隠すが、男に腕を掴まれ、さらされてしまう美しい乳房。
皇太子の紅いキスマークがいくつも残されていた。
「リチャード皇太子の女になったと言うのは本当だったな。
それならすべきことは…!!」
そばのベッドに押し倒され、一気に犯されてしまう。
「いやぁあああッ!!」
つい1時間ほど前は皇太子に抱かれ、初めて悦びを感じていた身体―
(殿下!! 殿下ッ!! 私…汚されてしまった!! もう…もう、あなたには… )
舌を噛み切ろうとした王女に気づき、口の中へサイドテーブルに載っていた
果実を入れられてしまう。
「う…ぅ…」
男が腰を使い出すだけで、吐き気を感じ、胃液が逆流してくる気がする。
くぐもった呻き声だけが漏れていた。
男は何度も腰を打ちつけ、彼女の中へ欲望を吐き出した。
満足しない男は叫ぶ。
「まだまだだ!!」
何度も犯され、王女の瞳から力が無くなる。
ただ涙だけが溢れ出ていた。
天幕の中へキュラ帝国兵が何人も入ってくる。
隊長が王女を犯しているのを見て、己を刺激していた。
「おい!! そこに転がっている女は構わんぞ!!」
隊長の言葉に狂喜した男達は欲望の塊と化す。
ジェシカは複数の男に嬲られてしまう。
王女もまた輪姦されていた。。。
「そろそろ…戻らねばならんな。」
「「「はッ!!」」」
キュラ兵士達は用のないジェシカを殺し、王女を連れさらう。
シーツだけを纏わせた王女を馬に乗せ、ペリオスたちはその場を後にする。
キュラ王城に到着したビスマルク国軍は勇敢に戦いを挑み
王座を目指して行く。
特に皇太子リチャードの活躍は目覚ましく、目の前の敵をことごとく倒していく。
彼の心の中は別のことで占められていた。
(何故だ!? 何故… 乱暴に犯し、冷たく接してきたはずなのに…何故だ!!)
王女の愛の告白に戸惑い、今も自問自答していた。
彼女に愛されるはずはないと感じていたのにもかかわらず…
彼は昨日、王女に笑顔を見せたという自覚がなかった。
まさかその一瞬で恋されているとも気づかずに…
(僕は…彼女に憎んでもらわなければならないのに…)
剣を振るう彼の表情に苦悶が浮かんでいた。
進児、ビル、リチャードの3人が謁見室に辿り着くと、
不敵な笑顔の50過ぎの強欲そうな体格のいい男が鎮座していた。
顔は半分グロテスクな仮面で覆われていた。
「…お前達がビスマルク国の皇太子と双璧の大佐…か。」
「そうだ!! 観念しろ!! ヒューザー!!」
「くっ…くっ…く… そう簡単に行くかな?」
ずらりと周りを兵士に囲まれた3人。
一斉に襲い掛かってくるが、果敢に3人は戦う―
剣のぶつかる音が謁見室に激しく響く。
「はぁッ!!」
「とう!!」
「ふんッ!!」
数十人いた兵士達を倒してしまう3人。
謁見室の床に死体が転がる。
「ふん、こんなものか…」
皇太子が不遜に呟く。
しかし皇帝は動じることなく高笑い。
「ははは… さすがここまでやってきた者たちだ。
褒めてやるぞ。
さ、次は簡単に行くかな?」
ぱちんと指を鳴らすと隠し扉だった壁が開く。
「「「何ッ!?」」」
3人が振り向くと そこにはペリオスに担がれた王女・ファリア姫の姿。
意識は無く、シーツ一枚を身に纏っただけの姿を見て
皇太子は彼女の身に何が起きたのかを察した。
「貴様… 私の姫に何をしたっっ!?」
「見れば解るだろう!」
ペリオスはにっと微笑み、姫を床に降ろした。
シーツが肌蹴け、肌にこびりついた白い残滓…
「王女は私に犯され、よがっていたぞ!!」
「!? 貴様ぁッ!!」
嫉妬と怒りに燃えた彼は男・ペリオスに立ち向かう。
男の予想では嫉妬に狂った皇太子の隙をついて倒すこと。
しかしそれは逆効果だったとすぐに解った。
「くうッ!!」
皇太子の剣が頬をかすめ、血を滲ませる。
ペリオスは皇太子に気圧されていた。
激しくぶつかる剣の音で目覚めた王女。
ぼんやりと視界に恋してしまったリチャード皇太子が映る。
ペリオスは皇太子が単に王女の身体に溺れているだけだと
調査報告を受けていた。
しかし目の前の皇太子の怒りは半端でない。
「お前、この王女のこと…本気で!!」
「あぁ…愛してる!! しかし… しかし…!!」
皇太子の剣がペリオスの剣を絡め取った。
剣は空を舞い、床に突き刺さる。
「私の未来のために… 愛して欲しくなかった!!」
そう叫んだ皇太子の剣は男の腹を貫いていた。
「ぐ…ぁッ!!」
血を吐いて親衛隊隊長は絶命する。
床に倒れていた王女は己の耳を疑う。
(私のこと… 愛してる?? でも… 私に愛して欲しくなかった?
…どういうこと??)
緩慢な動きで身を起こす。
そのことに3人は気づいてない。
3人の視線の先には冷徹な瞳のヒューザー皇帝の姿。
皇太子と大佐たちが王座に鎮座する皇帝を睨む中、
まだ息のあった兵士が彼を弓で狙っていた。
その動きに気づいたのは王女だけ。
「危ない!!殿下!!」
「「「えッ!???」」」
放たれた弓矢の前に飛び出してきたのは倒れていたはずの王女―
二本の矢が華奢な身体に突き刺さっていた。
「あ… で、殿下…」
王女が倒れるのを皇太子の目にはスローモーションの様に映る。
熱い涙が溢れ出すのを感じていた。
「くそッ!! 許さんぞ!! このキュラの悪魔どもめ!!」
彼の叫びと共に3人はほぼ同時に皇帝に飛び掛る。
皇太子の剣が皇帝の顔半分を覆っていた仮面を割り、
進児とビルが腹と胸に剣を突き立てていた。
「ぐッ!!あッ…!!」
王座に鮮血が流れた。。。
そのまま皇帝ヒューザーは絶命してしまう。
キュラの兵士達はそれを見届けると蜘蛛の子を散らしたように
逃げ出していく。
皇太子は慌てて、王女の元へ。
「姫!! そなた…何故!? 何故、私を愛した!?」
抱き起こし、問いかける。
「殿下… 私、本心が聞けて、嬉しい…
ありがと…う…」
彼の腕の中で意識を失う。
「ファリア!! う…あぁあッ!!」
睫毛に縁取られた瞳は彼を見つめない。。
「殿下、慌てるな。」
「何だと!?」
「俺、出掛ける前に王女様に護法を掛けておいた。
彼女自身が死を望まない限り、死にはしねぇ。」
手首で脈を取るとゆっくりと脈打っているが弱い。
「へ… 何でだ?」
ビルの護法では死なないはず。
しかし彼女は 死を望んだ。
ペリオスに犯された時点で―
しかし彼女は死んでない。
それが証拠に弓矢の刺さっている肌からは出血してない。
だが意識は失ったまま。
「おかしいな… 殿下に拒否されたから…死にたくなったのか?」
「あ…私のせいなのか…? そうなのか?」
ビルの言葉に皇太子は自分を責める。
王女の身体を見てみる、ビルと進児。
「に、したって血が流れてないぞ、ビル。
何故だ?」
ビルは力を行使する。
手の平に淡い光が生まれ、
その手をかざして身体の中に異変があるか調べてみた。
「…ん?」
彼女の身体の一部からエネルギーを感じる。
手で触れてみると…力強い脈動を感じた。
「え…?? あれ…?? ってことは…
殿下、王女様は助かりますよ。」
「何でだ?」
「腹ん中に…子がいる。
その子が生きたがっている。
生まれたがっている…」
ビルの言葉に青天の霹靂。
「何だって!? ありえないぞ!! 本当に…私の…子なのか?」
少々冷ややかな視線を送る大佐たち。
「だって…さんざん、毎日王女様を抱いてたんだろうが。
出来て当然だよな、進児?」
「あぁ。」
「あ…それは、その…」
「とりあえず、護法を解除する前に傷つくらないように弓矢を抜いてしまわないとな。」
ビルと進児が一気に二本の弓矢を引き抜くと血も流れず、
傷口もない。
「さすがビルの護法だな。」
「だろ? じゃ、解除する。」
王女の額に手を当て、口の中でまじない言葉を呟く…。
しばらくしてまつげが震え、瞳をあけた。
「あ…私、死んだのじゃ…??」
「姫!!」
リチャード皇太子は安心した笑顔を見せ、抱きしめる。
その頬には雫が零れ落ちていた。
「死んでなんかいませんよ。王女様。」
「え? ビル大佐…?? 」
覗き込んでいるビルを見上げる。
「悪い夢を見ておられただけです。」
「そう…なの?でも、ここは…??」
「確かにここは敵の居城・キュラ王城ですがね。」
笑顔を見せられ、キツネにつままれたような面持ちの王女。
ビルは護法解除と共にここ数時間の記憶を消しておいた。
抱きしめてくれている皇太子に王女はか細い声で告げる。
「あの…殿下。
私を嫌わないで下さい。
お願いです…」
「姫…すまなかった。」
「え?」
「私の話を…聞いて欲しい。
進児とビルもだ。」
「「は??」」
皇太子リチャードは己の身の上話を始める。
「私が生まれたのは ビスマルク王家の血縁・ランスロット公爵家。
私の6代前の当主のがことの始まりだった…」
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(2006/3/11)
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