ardor -2-
皇太子は天幕で進児大佐から報告を受ける。
「殿下… 少々遅かったせいで、国王夫妻はキュラ兵に殺されていました。」
「何だと!?
…そうか、だから国王夫妻は王子と王女を逃がしていたのか…
それで彼女は私に命乞いをしてきたんだな。
自分はどうなってもいいから、弟を助けて欲しいと。」
「殿下、そんなことが?」
「あぁ。
そういう訳で、私は彼女を国に連れて帰るぞ。」
「はぁ?!」
進児大佐は半ば呆れた口調。
「彼女は大陸一の美姫だぞ?!
こんな形で手に入れられるとは思いもしなかったがな。
私の愛人にでもしてやるさ。
コレで王子としてのハクがつくってものだろう?」
皇太子が王女を気に入ったのはさっきの一幕で解っていたが
まさかこんな展開になるとは思いもしなかった。
「それでは城内のキュラ兵の遺体を
我が国の勇敢な兵士達の亡き骸を運び出し、弔ってやらねばな。」
パルヴァ城内はキュラ兵とビスマルク国兵の遺体で血の海と化していた。
パルヴァ国には基本的に兵士はいない。
不幸にも殺されていたのは国王夫妻と使用人たち。
目を細めて皇太子は告げる。
「パルヴァ国王夫妻も…墓地に運んでやれ。」
「…はい。」
その日の内にキュラ帝国兵もビスマルク国兵も荼毘にふされた。
国王夫妻は丁重に埋葬される。
夜には一応、王子と王女は城内の自室に軟禁状態。
ただ王女の部屋には皇太子が一緒にいる。
彼は寝室でぞんざいに腕を組み、囚われの王女に告げる。
「さ、あなたの忠誠の証を頂こうか?」
「…!?」
目の前の美青年は冷たい瞳で言い放つ。
確かに命を助けてもらう代わりに身を捧げるとは約束したが
まさかその日の夜だとは思いもしなかった。
「さ、脱いで。」
「あ…」
困惑していたが、なんとか決意を固め、キッとくちびるを咬み、
ドレスに手を掛ける。
涙をこらえながら王女は脱いでいく。
「あなたの弟君も…国民も… あなた自身に掛かっているのですよ。」
「え…?」
「あなたにはその価値があると見た。さぁ…」
「ぁ…」
確かに弟の命を助けて欲しいと願った。
あの時は民のことまで考えられなかったが
今の自分に出来ることで弟と国民を守れるのならと決心する。
白い肌にはまだ包帯が巻かれている。
傷は浅かったが 恐怖心の方が深く心に傷をつけていた。
思わず身体が震える―
最後の一枚だけは脱げずにいた王女。
椅子に腰掛けて、見上げていた皇太子。
「…まぁ、いいだろう。
こっちに。」
おずおずと近づく王女の頬は真っ赤に染まる。
目の前に来ると肌に巻かれていた包帯を外していく皇太子の手。
「あ…ッ!!」
巻かれていた包帯を外されると、雪肌にうっすらと残る紅い切り傷。
「…傷は舐めて治すのがいいんだ。」
立たせていた王女の肌にくちびるを這わせる。
冷たいくちびるで王女はビクリと震えた。
「く…」
耐えなければならないと思うと、瞳の端から涙が零れ落ちる。
皇太子はそんなことに構わず、白い肌の上に残る剣先でつけられた紅い傷をくちびるで辿っていく。
「ん…く…」
屈辱と羞恥で王女の心は苦痛しか感じない。
そんな王女の反応に彼は少々嬉しくなる。
今まで女は向こうから身を投げ出してきた。
こんな反応をする女はいなかった。
彼はあることを考え、気づくと 王女をベッドに押し倒していた。
「あ…ッ!?」
「姫はもう私のものだ。」
それだけを告げると 最後に残った一枚を奪い、
一気に身を沈める。
「きゃあああぁっ!!」
身がふたつに裂かれるような激痛に王女は絶叫していた。
愛撫も何もない、いきなり犯され、破瓜の血がシーツに滴り落ちる。
王女の身体の上で、彼はにやりと笑う。
「本物の処女…か、嬉しいよ。」
「ぅ…くッ…」
あまりの激痛に声すらまともに出ない。
ただ、この苦しみが早く終わることを彼女は望んだ―
両親を殺され、今は弟と国民、国を守るために 身体を奪われた悲劇の王女―
丸一日、皇太子は王女の部屋にいた。
ずっと彼女を味わっていたのだった。
その間に、王子・アリステアと伯父・ホイットリー候、
皇太子の意向を伝えられていた進児&ビル大佐との間で話し合いが持たれていた。
結果―
13歳の幼い王子であるアリステアが成人するまで
伯父・ホイットリー候が国王代理を務めるということに。
もちろんビスマルク国はそれを承認した形。
翌日、皇太子が王女の部屋から出てきた時点では
既に何もかもが決定済み。
満足げな笑顔の皇太子が両大佐に声をかけ、ねぎらう。
「ご苦労だったな、2人とも。」
「いえ。結構すんなりと事は済みましたから。」
「そうか。
…もうひとつ、決定事項がある。」
皇太子の笑顔を見て、両大佐は顔を合わせる。
ビル大佐が片眉を上げて問いかけた。
「…ひょっとしなくても王女のことか?」
「あぁ。私は彼女を連れ帰る。
出来れば妃にと。」
「「本気ですか?!」」
皇太子の応えに二人は驚く。
「彼女が気に入った。
貴族の娘より、王族の姫のほうが王妃に向いているだろう?」
「それはそうですが…」
「手放すつもりはないさ。」
彼の満面の笑顔に何も言えなくなる大佐たち。
to -3-
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(2006/3/9+10)
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