ardor -1-
ここは異世界・セジュール。。。
唯一の陸である、ピエーナ大陸は2つに割れていた。
西の大国・キュラ帝国が圧倒的な軍事力で持って周辺国を侵略・支配し、
大陸の75%を掌握しつつあった。
皇帝・ヒューザーは今だ抵抗を続ける敵国・ビスマルク国を攻撃する準備を進めていた。
しかし、ビスマルク国は戦力を削ぐ意味もあって 皇太子が率いる少数の精鋭部隊でもって
キュラ帝国に支配されている国々を味方につけつつ、西を目指している。
皇太子の目の前には小国・パルヴァ。
領土は確かに小さいが、山と水と森に恵まれ
近年は金鉱脈が見つかった事もあって裕福になりつつあった。
しかしパルヴァ国もキュラ帝国に支配され、
王家と国民は怯えながら暮らしていた。
皇帝はパルヴァ王家の王女が大陸一の美姫と聞き、
妾に出し出せと言ってきた。
逆らえば 何をされるか解らない。
ヘタしたら国が滅ぼされると見越し、
王・アーサーは泣く泣く大切な王女をキュラ帝国へと行かせることにした。
この夜は出発3日前。
リチャード皇太子は都から少し離れたところに野営の天幕を張らせていた。
軍議用天幕で今回の作戦の手順を決めていく。
今回の目的はパルヴァ国王と密かに同盟を結ばせ、キュラ帝国を追い出すこと。
そのために夜の闇に乗じて城に侵入する事。
陽が落ち、空に星が瞬き始めるとビスマルク国兵士達は動き出す。
まだ敵には動きは知られていないはずだった。
ビスマルク国軍が城下に入る頃、キュラ帝国も動き出し、王城に攻め入っていた。
表面的にはヒューザーに従順なのだが、
それが気に喰わないこの国に駐屯している部隊長・ザトラーの独断行動。
国王夫妻の寝室に駆け込んできたのは夜着姿の王子と王女。
「お父様!!お母様!!」
「アリステア…ファリア…」
「兵士がうようよいるよ… キュラ国兵もビスマルク国兵もが…」
泣き顔の王子は母に抱きつく。
国王は唇を咬む。
王女に顔を向けると切り出す。
「アリステアを連れて、ホイットリー候のところへ行け!!」
「「お父様!?」」
ホイットリー候はこの国一番の槍の使い手で
軍を持たない国内では一番頼りにしている人物。
「彼ならお前達を守ってくれる。
さ、コレを持って。」
父は王子に短剣を渡し、王女に王家の印のネックレスを掛けた。
「え…!? コレは王家の宝物??」
「いずれにしても兵力のない我が城が落とされるのは時間の問題。
せめてお前達には生き延びてもらいたい。」
「そんな…!!」
王子は驚きの目を父に向け、
王女はその父の悲壮な決意を悟る。
「…お父様、解ったわ。」
「ここの抜け道を通って行きなさい。
裏庭に出るからホイットリー邸へは森を突っ切って行けばいい。」
「はい。」
父は隠し扉を開け、抜け道を見せる。
王子はそんな父の心をまだ解らないほどに幼い。
「父上…」
「アリステア。 行きなさい。」
父に言われ、王女は弟の手を引き抜け道に入ろうとする。
「姉上!!いやだ!!」
パンッ!!
姉の手が弟王子の頬を打った。
見ると姉も涙を流しながら打ったのだと解る。
「行くのよ!! ここにいたら、どっちかの兵士に殺されるわ。さぁ!!
…行きますね、お父様、お母様。」
まだ呆然としている弟の手を引いて扉に入ると
振り返る王女の頬には涙。
「あぁ。気をつけて…」
王子と王女が扉に入って行き、姿が見えなくなると
書棚に偽装された扉を閉める。
直後、キュラ帝国兵が寝室へと踊りこんできた。
「あなた!!」
「ただでは死なん!!」
壁に掛けてあった剣を手に取り、立ち向かう。
剣を振るう国王に5人の兵士達が襲い掛かる。
3人は倒せたが、2人倒しそびれた。
その剣が王の身体を貫く。
「あなたぁ!!」
目の前で愛する夫の壮絶な死。
その悲しみさえ、無視して兵士達は夜着姿の王妃に襲い掛かる。
夜着を引き裂かれた時点で舌を噛み切っていた。
暗い通路をランタンを手に歩くふたり。
壁に手を突いて姉の王女は歩いていた。
「…もうそろそろ出口のはず。」
外の戦いの音など聞こえない闇の中。。。
王女が突き当たった壁を押すと扉だった。
開けて外に出ると裏庭の彫像の台座。
暗い裏庭には誰もいない。
「行きましょ。」
「うん。」
2人が歩き出した直後、いないと思っていた兵士がいた。
しかもビスマルク国兵士の姿がひとり。
「おやぁ… どっから来たんだ?」
兵士が2人に近づくと、ランタンを持つ乙女をじろじろと見つめた。
「へぇ… 下働きの女にしては 美人だな。」
兵士は剣を鞘から抜くと二人に突きつける。
「僕達を殺すの?」
乙女の夜着を掴み、泣きそうな顔で問いかける少年の言葉に兵士は笑う。
「いいか… もったいない。
こんな女にはこうするんだよ!!」
剣先で夜着を引き裂いていく。
白い肌が露わになって行く。
デコルテも白い太ももも…
「止めてよ!!」
「誰が!!」
突進してきた少年を平手で殴打する兵士の手。
小さな身体は吹っ飛ばされてしまう。
「ステア!!」
目の前の出来事に乙女はキッと不埒な男を睨みつける。
しかし動じる事などなく、せせら笑う。
「そーゆー目、好きだなぁ…」
男は調子に乗って、残っている夜着を遠慮なく切り裂く。
白い雪肌に紅いスジが走る。
「く…」
「動くなよ… 動いたら死んじゃうぜ…」
ギリ と唇を咬む乙女。
半裸になった彼女を彫像の台座に押し付けて、
ギラついた欲望をたぎらせた男の手が肌に触れる。
全身が粟立ち、悲鳴を上げた。
「いやぁああッ!!」
目の前の美しい乙女に夢中になってた兵士。
その時、裏庭の一角に天幕を張り終えたのを見届けた皇太子が
周辺を見に来ていた。
「何してるか!?」
「!? こ、これは…リチャード殿下!!」
昏倒していた少年が目覚め、硬直した兵士に必死に飛び掛る。
「姉さまから離れろ!!」
少年の言葉で兵士が乙女に無体を働こうとしていた事を悟る。
−半裸にされてる乙女に頬にぶたれた痕のある小さな少年
思わず皇太子は溜息が出る。
「お前みたいな者が我が軍の兵士とはな…品位を下げるだけだな。
まともに女も口説けないとは…」
「も、申し訳ございません。つい…
殿下…お許しを…」
さっきまで自分達に横柄な態度だった男が平伏していた。
彼女は男の言葉から やってきた青年の身分に気づく。
長身の金髪碧眼の冷たい瞳の青年がビスマルク国の皇太子・リチャードだと。
「お前は下がれ!!
…大丈夫か?娘よ。」
彼は彼女に向き直って問いかける。
しかしその瞳は下女に向けるようなもの。
「あ、あの…」
「姉さま…」
弟は不安から、姉に震えながらしがみつく。
彼女は意を決して声を掛ける。
「あなた様は… ビスマルク国のリチャード殿下でいらっしゃいますのね?」
「あぁ。そうだが?」
やはりと2人は確信し、顔をあわせた。
姉は真剣な顔で告げる。
「私は… 王の娘・ファリアと申します。
どうか…どうか、私のことはどうなっても構いません!!
弟のアリステアの命だけはお助けを!! お慈悲を!!」
「!? あなたが…美姫との噂のファリア姫か!!」
下女と思っていた娘が王女と解り、
上から下へと視線を送る。
切り裂かれた夜着はすでにボロ布と化し、腰にまとわりついている状態。
清冽なほのかな色香を感じる。
良く見ると白いデコルテには金に輝く王家の紋章のペンダント。
自分の胸に込み上げるものを感じた。。。
ごくりと生唾を飲む。
(どうしてもこの姫を手に入れたい…)
僅かな時間で考えをめぐらせた後、口を開く。
「いいだろう。
そなたと弟御のお命、お助けしましょう。
但し、ひとつ条件がある。」
「何ですの?」
「…私のものになることだ。」
「!?」
突然の言葉に驚きの目を見せる王女に彼は言葉を続ける。
「イヤならイヤで、構わんさ。」
そう言われても彼女には選択の余地はない―
震える唇で王女は応える。
「わ…解りました。 私のこの身、ひとつで済むのなら…
弟の事、お願いします。」
「姉さま!!」
少年は姉の顔を見上げると、決意で悲痛な表情。
彼女は弟の視線にかがみ、肩を掴んで話し出す。
「ステア… いいコト、よく聞いて。
いずれにせよ…私はこの国から出る運命なの。
ただ…キュラ帝国からビスマルク国に変わっただけよ。」
「あ…」
確かに3日後には姉はキュラ帝国に向かって出立予定だった。
「だから…嘆くことは無いわ」
涙ながらに弟はうなずいてみせる。。
その時、城から歓声が上る。
城の塔にビスマルク国の旗が上った。
城を見上げていると進児大佐が駆け込んで来る。
「殿下!!ご報告を!!」
「あぁ。今行く。
ここにいるパルヴァ国王女と王子を天幕へ。」
「!? はい…」
進児大佐は皇太子のそばにいた王子と王女の存在に気付くと
驚きを隠せないでいた。
城内でいくら探しても見つからなかった2人…
4人は天幕へと行くが 王女は少々血が滲んでいたために
別の天幕へと導かれる。
アリステア王子は心細く感じたので姉と共に行く。
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(2006/3/8+9)
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