amnesia -2-
三段ベッドの最上段で眠れずにいたリチャード…
枕もとのパーソナルスペースにあるいくつかのフォトフレームが目に付く。。
両親と一緒に映っている幼き日の自分。
そして黒髪の乙女の肩を抱いて微笑んでいる自分。
その乙女のちょっとすました笑顔の写真。。。
「こっちは両親ということなんだな…
と、するとこっちのは… この乙女は誰なんだ?」
ひっくり返して裏を見てみると文字が書かれていた。
"ファリアのデビューパーティにて。 リチャード17歳の春"
「ファリア…?? …ッ!!」
ずきりと頭に痛みが走る。
「ファリア…君はとても大切な…存在なんだな…
僕の恋人なのか…??」
また痛みが走る。
「ぅ…」
痛む頭を抱え、ベッドに突っ伏す。
いつの間にか彼は眠りに落ちていく…
***
真っ白な空間にひとりで佇んでいる…
何処からか黒髪の乙女が駆け寄ってくる。
「リチャード!!リチャード!!」
「え…君は…?」
「リチャード、待っていたのよ!!」
「え?」
目の前の乙女は満面の笑顔を彼に向け、
抱きついてきた。
「あなたの帰りをずっと待ていたの…
もう離れないわ、リチャード…」
嬉し涙を流して、彼女は彼の腕の中へ。
しかし彼はその細い肩を両手で外し、問いかける。
「待ってくれ!! 僕は…本当にリチャードなのか?」
彼の言葉に訝しさを感じて、エメラルドの瞳を覗き込む。
「え? 何言っているの?
間違いなくあなたは私の愛してるリチャードだわ。」
「本当に僕は君の恋人なのか?」
彼の言葉に困惑を覚えつつも、乙女は告げる。
「リチャード…疲れているのね。。。
大丈夫よ、ね…」
優しく乙女は胸に彼を抱きしめる。
(あ… 懐かしい…この優しいぬくもり… ファリア…)
*****
朝、目覚めると涙の痕が頬に残っていた。
「え? 僕…??」
(なんだか…幸せな夢を見ていたような気がする。
この…黒髪の乙女がそばにいるような… )
ひとり、ぼぅとしていると 進児が声を掛けてきた。
「おはよう、リチャード。 目、覚めたか?」
「あぁ。」
"リチャード"と呼ばれても なんだか今も実感が湧かない。
まるで他人の名で呼ばれているような感覚―
とりあえずダイニングに行き、4人揃って朝食を摂る。
朝食を終えると同時に警報が鳴り響く。
マリアンがコクピットに駆けて行くと すぐに彼女の声がスピーカーから入る。
「進児君、大変!! デスキュラに襲われてる村から緊急通信よ!!」
「OK!!」
進児とビルはプロテクトギアルームに向かって駆け出す。
一応、リチャードもそれに見習って 駆けて行く。
なんとかプロテクトギアを身につけることは出来たが
戦闘に出る自信はない。
「おい! リチャード!!」
「ん?」
「外に出なくていいぜ。
マリアンと一緒にマシンに残ってくれ。」
「…あぁ。」
アローストライカーとロードレオンは飛び出していく。
マリアンがセンターシートに着き、二人を援護する。
しかし数が多くて 倒しきれない。
まさに雲霞(うんか)の大軍…
ビスマルクマシンはヤツラの仕掛けた電磁ネットに捕縛されてしまう。
進児とビルが駆けつけようとするが
敵に囲まれてどうすることも出来ずにいた。
「きゃぁああああー!!」
「う…あぁ… ッ!!」
リチャードの脳裏に走馬灯のように記憶が駆け巡る。
その中のひとつ…
乙女の面影がはっきりと浮かぶ。
「!! 死ねない!! 君のためにも!!」
自分の名がはっきりと思い出せた。
目の前のコンソールキーを叩き、エンジンを噴射させてネットから逃れる。
「リチャード!? 記憶が戻ったの?!」
マリアンの声が耳に響く。
「あぁ。 マリアン!! すぐに進児たちを収納しよう。
敵の巨大メカが来る!!」
「OK!!」
すぐに進児とビルを回収する。
目の前にはデスキュラの巨大ロボ。
ミサイル攻撃を受け、転倒してしまう。
再び電磁ネットの衝撃に襲われてしまった。
「うあああ…!!」
「くそッ!!」
「進児、噴射をして体勢を立て直す!!
その直後にオルガニックフォーメーションだ!!」
「リチャード!? 元に戻ってたのか?」
「そのことはアトだ!! 早く!!」
「あぁ!!」
リチャードが体勢を立て直させると同時にオルガニックフォーメーションを放つ進児…
目の前で巨大メカは大爆発。
4人はその爆炎を見つめる。。。
母艦に戻ったビスマルクのコクピットではビルも進児もマリアンも
リチャードの下に。。
ビルが彼に問いかける。
「おい!! リチャード、記憶が戻ったんだな。」
「あぁ。みんなすまなかったな…」
「いいってことよ。なぁ…進児、マリアン?」
「あぁ。 やっぱり次はビルの番かなぁ…」
3人の口から笑い声が上ると
ビルも少々苦笑い。
シティへ戻ると3人に迷惑をかけたからと
彼は食事を奢る。
満面の笑みでステーキをがっつくビルを見て
進児とマリアンも笑顔…
それを見つめるエメラルドの瞳。。。
*****
―夜中
三段ベッドの最上段でフレームを手に取り、見つめる彼がいた。
(ファリア…ごめんよ。
君を忘れたりして…
でも、一番に思い出したのは君の笑顔だった。
許してくれ… )
そっとフレームの乙女にキスする…
(必ず宇宙を平和にするから… もうしばらく、待っていてくれ…)
夢の中で彼は愛しい彼女を抱きしめていた…
Fin
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(2006/2/24)
*あとがき*
Kayさまからのリク・その2・リチャード記憶喪失編。
ちょっとショート気味ですが…いかがでしょうか??
やっぱり4人Onlyはちょいと無理でした。
彼を描くとどうしても彼女が関ってきますねぇ…
ふふふ…
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