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Abyss -1-






地球人が移住をするために殖民星として開発をした木星の衛星・ガニメデ。
ここ20年のめざましい開発のおかげで地球人はやっとまともな生活を営めるようになった。
地球からの観光客も増え、平和が訪れたように見えたがそれを打ち破る者たちが出現。

デスキュラ星人…彼らは母星を失い、殖民するための星を探していた。
そこで目をつけたのがガニメデ星。

しかしすでに地球人が移殖を始めていたため戦争に至る。





2084年に地球連邦のルヴェール博士によるビスマルク作戦が始まるまで時間を要した。




その6年ほど前にひとつの悲劇があった。


-アテナⅡ号事件-


貨物船と間違えてデスキュラが観光船を襲撃した。
船には英国王室庁副長官パーシヴァル一家が乗っていた。

一家4人のうち助かったのは父・アーサーと息子・アリステア。
母・セーラと娘・ファリアは行方不明とされた。

緊急脱出用のポッドごと漂流していたのだ。








そのポッドが回収されたのは3日後。
しかもガニメデに向かう商業船。

娘は記憶を失い、母はすでに死亡していた。


ミドルネームの「クリスタ」しか思い出せない少女はガニメデの施設に送られることとなる。
ここから彼女の不幸は始まった―








*******************



年齢と「クリスタ」しかおぼえていなかった少女は孤児院で暮らすこととなった。


もう12歳ということでなかなか里親となる人物は現れない。


4ヶ月が過ぎた頃、彼女のピアノの才能を見抜いた音楽家のウェインライトの元へ引き取られることとなる。



しかし激化するデスキュラの侵略戦争は彼女から養父母を奪った。
だがこのときのショックで彼女は自分の本当の名を思い出していたが誰にも言えずにいた。
クリスタ=ウェインライトとして生きることを選んだのだ。


残された彼女は再び施設に引き取られることに。

もう13歳の彼女はスミスという富豪の家に引き取られる。
表向きは養女としてだが実は使用人としてとのこと。



そんな中、彼女を可愛がる人物がいる。
スミス夫人ケリー。
彼女だけが少女のピアノの才能に気付き、自ら指導するほどに。



スミスの家に引き取られて1年が過ぎた頃、家でパーティが開かれた。

主人スミスの誕生日ということもあって近隣の金持ちが集まる。

この日、クリスタは初めて人前に出された。

パーティ会場でピアノの演奏を披露。

客のほとんどがその腕前の見事さに拍手するほど。

そして少女の美貌にもみなは驚いていた。

義父であるスミスさえも。






いままで汚らしい服しか与えていなかったため、その美しさに気付くことはなかったのだ。

夫人が用意したドレスを着るとなんと見違えたことか…

このことが後の悲劇になるとは夫人は思いもしなかった。




*******************



少女がスミスの家にやってきて4年という歳月が流れた頃、スミスの甥のジョーイがやってきた。

彼はスミスの跡継ぎとして呼ばれたのだ。

夫人とスミスの間に子供はいない。

最初からジョーイがスミスの財産を受け継ぐこととなっていた。

クリスタを引き取ったのは体裁をつくろうためだったのだ。




ジョーイは義理の妹に当たるクリスタに一目ぼれした。

今はメイドの仕事をしながら、夫人のピアノを習っているクリスタ。

彼はおじのスミスに告げる。


「俺、あの娘が欲しいな~。」


「何?お前もか?」


「お前もかって…おじさん、あの娘を犯ったのか?」


「いや、まだだ。ケリーがずっとそばにいるからな…」


「ふーん…そうなの。じゃあ、邪魔者はおばさんってことだね?」


「そうだな。」


よこしまな心を抱く男二人は極悪な計画を立てていた。






*******************

同じ頃、夫人のケリーは心配していた。

17歳になったクリスタは誰が見ても美しい乙女に成長した。
近頃は夫が時折いやらしい目でこの娘を見ていることにも気付いている。

20年前、財産目当てでスミスはケリーに近づいた。
8歳も年上のケリーに言い寄り、半ば強引に結婚したのだった。

『もし自分が死ぬようなことになればクリスタを守ってやれなくなる』

そんな想いが彼女にはあった。


だからその日のピアノの練習の最中に手を止め、告げた。

「クリスタ。」

「はい。」
返事した乙女は長い黒髪を揺らし、首をかしげ夫人を見上げる。

「もし近い将来、私が死ねば…」
<
「!  なんてことをおっしゃるんです??」

「いいえ、クリスタ。きっと間違いなく私は…」

目を伏せる夫人にクリスタは何も言えなくなる。

「私が死ぬことがあれば、この屋敷から逃げなさい。」

思いもかけない言葉に驚く。

「夫と甥があなたを狙っているはずですから。」


「ね…狙ってる?」


「そう…まだ乙女のあなたのには酷な話だと思うでしょうがおそらく…

ここに私の財産が入っています。」

ケリー夫人は一枚のカードを差し出す。

「これは?」


「私名義の預金です。あなたが逃げるときにお使いなさい。」

「でも…」

「いいから、受け取って。」

夫人のその真剣な瞳にクリスタは受け取る。

「いいわね。私が死んだら私にかまわず逃げなさい。」


「そんな日が来ないことを祈ってます。」


「クリスタ…」


義理の母娘はこれから来る悲劇を予感していた…









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あとがき(20041011)

ひぇ~…とんでもないお話が始まりました~
これってR16くらいかしら??



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