White Snow-1-
2月に入り寒さ本番の地球の北半球。
ウィンタースポーツが好きな者にとってはベストシーズン。
彼… リチャードは20歳の誕生日を家族と恋人に祝われて幸せな時間を過ごせた。
ビスマルクチームの一員として活躍した結果、
無事にガニメデ星と地球に平和をもたらした彼は
毎日を忙しく過ごしていた。
誕生日を過ぎて、やっと落ち着いた生活に戻りつつある。
そんなある日、彼はロンドンの自宅で進児からのメールを受けた。
"よお、元気か? 久しぶりだな。
2月末にビルとカナダへスキーに行こうかって話が出てさ、
リチャードも行こうぜ。
勿論、ジョーンさんもマリアンも行く予定。
詳しい話は近々 直接、電話するよ。
それじゃ。
進児 "
メールの文面を見て、彼は呟く。
「僕に一人で参加しろっていうのか…?」
彼の心の中では恋人に姿が浮かんでいた。
「もちろん、彼女も…」
進児からの電話を待てず、彼は進児のナンバーを回す。
彼は今、フランスにいるはずだと。
「アロー?」
「Hello?進児?」
「その声、リチャードか?
久しぶり。 メール見たんだな?」
「そうさ。それで電話したんだ。」
テレビ電話に切り替わり、お互いの顔を見る。
進児は相変わらず元気そうだ。
「で…どうするんだ?スキー?」
「あぁ、勿論 僕も行く。
幹事は進児かい?それともビル?」
「ビルのヤツだよ。
カナダの貸し別荘でいいの見つけたとかわめいてたし。」
「そうか…
ところで僕だけ一人で参加って言うのは不公平じゃないか?」
「え…あ。
っとごめんごめん。メールでシンシアさんのこと言及しなかったもんな。」
進児が謝ってきてくれたが、彼は黙ってしまう。
申し訳なさそうな顔をする進児。
「やっぱり怒った?」
しばらくの沈黙の後、彼は言葉を発した。
「… シンシアとは別れたよ。」
「え!?」
本気で進児は驚く。
そんな事になっていたとは全く想像できなかった。
「じゃ…リチャードは今、ひとりなんじゃ…?」
「いや、婚約者がいるよ。」
「マジで?」
「あぁ。」
「…リチャードんちって伝統ある英国貴族だよな。
…政略?」
的確な言葉に彼は一瞬黙った。
「半分はそうだけど、もう半分はそうじゃない。」
「どういうことだよ?」
「カナダで会う時に詳しく話すけど…今、聞きたいか?」
「あぁ。」
いつに泣く真剣な眼差しの進児に彼は話す事にする。
「父と祖父、一族のほとんどにシンシアとの結婚を断固反対されてね…」
「!? それで?」
「それで…シンシアとは別れる事になった。」
「何で?」
進児はきっぱりと告げた彼に問いかける。
「…彼女はガニメデ星出身だってこと、孤児院出身だってこと…
他にも理由はあるんだが。」
「そんなんで別れたのか?
好きじゃなかったのかよ!?」
一緒に地球に帰る時、
6人一緒に行動していた。
あの時のふたりには確かな愛情があったと進児は感じていた。。
真剣な顔の進児の顔を見て、彼は呟くように言う。
「僕はあることに気づいた。」
「…?」
「僕はシンシアをある女性の代わりにしていたことに気づいた。」
「ある女性?」
「…そう。
僕の初恋の相手さ。」
「ってことは、例の行方不明の?」
「あぁ。彼女が生きて英国に…帰ってきた。」
「!? 本当か?」
「進児もニュースで知ってるだろう?
昨年10月末にあったデスキュラ基地に地球人の遺体発見事件。」
「…? 知ってるけど?」
進児は片眉を上げて、訝しげに応える。
「彼女はそこで幽閉されていた。」
「本当か?」
「あぁ。唯一の生存者だったんだ。」
リチャードは実はファリア本人から、真実を知らされていたが
他言しないで欲しいと頼まれていたので
進児にも言わず、表向きの話をした。
複雑な顔をしている進児とリチャード。
「…それで元婚約者の彼女をよりを戻したのか?」
「そういうことになるな。」
「へ〜。。。
リチャードってそんなに冷たい男だったんだ。」
「冷たい?」
「シンシアさんを捨てたなんてよく出来たな。」
「…弁解の余地はないよ。
けれどあれ以上、英国にいたらシンシアをもっと傷つけていただろうさ。」
「…。」
「大昔に比べれば…貴族以外の相手と結婚する事はありえる話だ。
けれど僕には許されなかった。
そういうことだ。」
進児はその言葉を聞いてある意味、リチャードが可哀相だと思った。
好きな女性と結婚できない… そういう世界もあるのだと。
しばし黙るモニター越しのふたり。
「…進児。」
「ん?」
「彼女のことは調べてもデータは上ってこないぞ。」
「何で?」
「彼女は英国王室の血縁者だからな。
昨年の1件とは関係ないことになっている。」
「ヘ?」
「5年半もデスキュラ基地に幽閉されていたなんて
社交界でおおぴっらに言えないからさ。」
「…そうか。
リチャードも大変だな。」
「あぁ。 まぁ…な。」
「で、話を元に戻すけど、
その婚約者の彼女もスキーに行くって言う事でいいのか?」
「あぁ、ビルにそう伝えてくれ。」
「解った。 詳しい日程と場所はビルからメールしてもらうよ。」
「それじゃ、よろしく。」
彼は進児との通話を切ると彼女の携帯電話に…
隣の邸とはいえ、ゆうに1キロほど離れている。
しかも夜…
3コール目で繋がった。
「はい? リチャード?」
「や、ファリア。こんな時間にごめん。
君に話したいことがあるんだ。」
「あら、なぁに?」
可愛い彼女の声を聞いて彼も微笑んでいた。
「実はね、僕が所属していたビスマルクチームのメンバーが
カナダにスキーに行かないかって誘ってきたんだ。
それで…僕以外はカップルが二組なんでね、
是非 君にご同行願いたいんだ。…ダメかな?」
一瞬考えるファリアの空気を察する。
「…いいわ。一緒に行く。」
「本当に? いいのか?」
「えぇ。 あ、でも、私…8年ぶりだから滑れないかも…」
「あぁ、僕が教えてあげるよ。」
「ホント?」
「それで日程と場所は未定だから…
近々仲間から連絡が入ったら知らせるよ。」
「はい。 あ… お父様に自分でお話しておくわ。」
「僕から話そうか?」
「いいわ、大丈夫。」
「そうか、ならいい。」
「それじゃ、おやすみなさい。」
「あぁ、おやすみ。」
ふたりは電話越しに微笑を感じていた。
2日後、ビルから添付ファイルつきでメールが来た。
場所はカナダ・ロッキー山脈。
日程は2月21日から3泊4日。
空港で集合ということで。
進児&マリアン組はフランスから、ビル&ジョーン組はアメリカ・ケンタッキーから来る。
彼は速攻、カナダ行きの航空券の手配をする。
勿論、ファーストクラスのシートで。。
現地には夕方16:35着の予定。
空港の到着ロビーで16時台に到着のフライトで集まることに…
出発当日の13時には迎えに行く彼。
14時30分に離陸する便に乗り込む。。。
ロンドン・ヒースローから10時間弱…
ふたりはゆったりとした気分で一路、カナダ・バンクーバーへ。
空港の到着ロビーは明らかにスキー客と言う人で溢れていた。
そんな中で二人はちょっと目立っている。
それと言うのも、カジュアルなスタイルではないふたりなので
まるでビジネスマンのように他人の眼に映っていた。
でもかえって先に到着していたビルとジョーンに早く見つけてもらえた。
相変わらず陽気なビルに彼も安心する。
隣に居るジョーンも幸せそうだ。
「よお!! 久しぶりだな、リチャード。」
「あぁ、そうだな。ビル元気そうで何よりだ。」
「で、そっちが噂の婚約者なのか?」
「…紹介するよ。
コイツはビル、そしてその向こうがビルの婚約者のジョーンさんだ。」
彼は彼女にビルたちを紹介する。
「初めまして、ビルさん、ジョーンさん。
ファリアと申します。よろしくお願いします。」
丁寧に挨拶する彼女にビルの鼻の下は伸びている。
ジョーンが横で肘でつついていた。
「よ、よろしく。俺、ビルです。」
「私、ジョーン=クレメンタインです。よろしくね♪」
「はい。こちらこそ。」
彼女は紹介されたビルたちが幸せなカップルだとすぐに解った。
「じゃ、あとは進児とマリアンだな。」
「そうだな。 あと10分くらいで到着ってところか…」
ビルとリチャードが出てくるはずのゲートを見ていた。
「ジョーン。すまないが荷物を見ててくれ。
俺とリチャードであの二人を迎えに行って来る。」
「えぇ。」
「ファリアも…いいかい?」
「はい。了解よ。」
そうしてビルとリチャードは二人が出てくるだろうゲートに向かう。
ジョーンとファリアはふたりでロビーのティールームへと。
21歳と19歳のふたりと言う事で話は結構合う。
全く違うタイプのふたり。。。
金髪グラマーなジョーンと黒髪で清楚なファリア。
けれど意外と仲良くなりつつあるふたり…
カップの紅茶が少しぬるくなる頃に4人がやってきた。
「待たせたね、ふたりとも。」
「おかえりなさい、リチャード。」
微笑み会うふたり。。
「紹介するよ。
こっちが進児で、向こうはマリアン。」
彼女は立ち上がって二人に挨拶する。
「初めまして。進児さん、マリアンさん。
ファリアと申します。よろしくお願いします。」
進児は本気で驚いた。
話には聞いていたが…こんなに可憐な乙女だとは思いもしなかった。
「よろしく、俺は輝進児です。」
「私、マリアン=ルヴェールです。よろしく♪」
可愛らしいマリアンの笑顔に彼女も微笑む。
「あら、ルヴェールってことは…?」
「そ、マリアンはルヴェール博士のお嬢さんだよ。」
「父をご存知なのですか?」
「えぇ。少し前にお世話になりましたの。」
彼女はルヴェール博士に会った時、
父のような優しさと頼もしさを感じていた。
その娘のマリアンと聞いて、少し親近感と言うか安心感を憶える。
「そろそろ、別荘に行こうぜ。
板とかも行ってるし。レンタカーも手配済みだからな。」
「そうだな。」
6人全員が揃ったところで、手配されていた4WDに乗って別荘に向かう。
勿論、運転は一番ベテランの進児。サイドシートにはマリアン。
後ろにビルとジョーンが。
一番後ろにリチャードたちが座る。
to -2-
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(2006/1/31+2/1)
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