Unlimited  -7-




―夜
少女の音楽院入試合格祝いにと夕食はご馳走が並ぶ。
ランドール夫人とふたりは笑顔に包まれていた。

「おやすみなさい、おばさま。」

「おやすみなさい…ランドール夫人。」


「えぇ…おやすみなさい。ふたりとも。幸せな夜をね。」

「「えっ…!?」」

ふたりは笑顔のランドール夫人の言葉に少々面食らう。

「私は…知ってるわよ。あなたたちが…昨夜、どうしてたか。」

「え…あッ!?」

少女は一気に顔が赤くなる。
少年も同様だったが、一応 言葉を発した。

「あの…」

「あぁ。ご心配なく、あなたたちの親に告げ口はしないから。
愛しあうふたりに野暮はしないわ。
素敵な恋人同士のふたりですもの。当然のことだと思ってるのよ。

ひとつだけ言っておく事は…彼女の身体をいたわってあげてね。
女の子はデリケートなの。」

「あ…はい。」

「それじゃ…ね。」


ほほ…と笑ってランドール夫人は食堂をを出て行く。





「リチャード…いいのかしらね?」
「いいんじゃないか? 夫人がああ言ってくれているんだし。」
「え…ぇ。」

「じゃ、行こ。」
「あ…」

少年が少女の腰を抱き寄せて彼女の部屋に向かう。


「僕、寝支度してくる…」
「えぇ…」

ちゅっと頬にキスを残して彼は廊下を駆けていく。


少女は部屋に入ると、入浴してネグリジェに着替える。
ベッドに腰掛け、昨夜のことを思い出すだけで肌が火照ってきた。

「リチャードったら…意外とHよね…」



ドアをノックする音がして、開けるために立ち上がる。

「はい。」

ノックの主は勿論、彼。

「や。」

笑顔の彼が立っていた。

「どうぞ…」

寝室に入ると彼は優しく抱きしめる。


「僕達…引き裂かれたけど…逆に良かったのかも。」
「え?」
「だってこうしてふたりだけの時間をゆっくり味わえるんだ。」

頬に頬を摺り寄せ、囁く。

「そうかも…まさかランドール夫人があんなに恋愛に寛容だなんて…
少しい驚いたわ。」

「…音楽家ってさ、恋に素直な人が多いらしいから…
そうじゃないか?ファリアも…」

「え? あ、そうかしらね…」

「僕が左脳派で、君は右脳派だから…
ふたりで1個の頭脳なんだよ。きっと…」

「あなたが論理派で私が直感派ってこと?」

「そう。お互いのない部分を補完しあってるっていうかさ…」

「あ…」

昔、彼の母親に言われた言葉を思い出す。

 "あなたたち、実は似てるのよ、違っているようで…"


 (だから… 私は彼を求めてるの? 恋してるの…かな?)


不意に黙る彼女に問いかける。

「何、考えてる?」

「あなたの言うとおりだと思って…
だから私…ずっと恋してるんだわ。」

奇麗なエメラルドの瞳を細めて彼は少女を見つめる。

「…うん。僕もだよ。
ずっと…幼い頃から、君しか見てない。」

「私、もよ。 リチャードが好き…」



ふたりのくちびるはどちらかともなく重なる。
しばらく重ねているだけのキス―




「…ファリア…」


彼の手はゆっくりと少女のネグリジェのフロントリボンを解いていく。
少女の手は少年のパジャマのボタンを外していく。

ネグリジェが床に落とされるとほぼ同時にパジャマも肌蹴られた。
自分でパジャマを脱ぎ捨てると、少女を抱き上げてベッドに降ろす。

ただ視線が合うだけで何も言葉を発しない。

少年はぎゅっと抱きしめた。
少女の白い肌の上を彼の手が撫でていく。


「ぁ…あぁ…ん…」

甘い溜息と喘ぎ声だけが部屋に響く―


甘く切ない時間は明け方近くまで―――









   ***


少年が目覚めると…ほんわかとしたあたたかさ。

「え、あ…」

自分の腕の中で少女が無防備な顔で眠っている。


   (そういや… こんな風にふたりで朝を迎えるのって…初めてじゃないか…?)



お互い素肌のまま、抱き合って眠っていた。
自分の二の腕に感じる彼女の黒髪の感触と心地いい重さ。
静かな寝息を立ててる可愛い顔―



安心しきってくれていると思うとそれだけで心が満たされていく。
男として頼られてる、信頼されていると…

  (あんなことした僕なのに… ファリア…)


彼女の"初めて"を強引に奪ったのに、許してくれただけでも…
感謝している、申し訳なく思っているのに…
こうしてくれている彼女がとてつもなく愛おしい。



昔の学校で自分のクラスメイトの男子達は彼女の事をこう言っていた。
『超お嬢様で楚々としていて…気品もあって…おとなしいって感じだよ。
あんまりスポーツが得意でないっていうのも…可愛いよ♪』

でも彼だけは本当の彼女を知っている。

『静かな情熱を持っていて、結構負けず嫌いで…
時々、ワガママな時もあるけど…それが可愛い。
自分で自分の立場が解っていて、絶対に高飛車にならない。
だからこそ、上品な気品を時折、彼女から感じる…  それと天然。』

ふっと昔のことを思い出して微笑んでいた。

「それが…君のいいところだよな…」


白く細い肩を撫でる彼の手。
すべらかなやわらかい二の腕をさするだけで心地いい。


「ん…」

彼の目の前の少女の瞼が開いていく。

「あ…れ? リチャード?」

「おはよう、ファリア。」

「えっ!? もうそんな時間なの?」

「あぁ。今… 6:40過ぎたトコ。」

「そうなの… おはよう、リチャード。」

眼前20センチも離れていないトコに彼の白い胸板。
気づくと抱きしめられたまま眠っていたことに気づく。

「ね…あのあと、そのまま眠っちゃったの?」

「そう…みたいだね。」

自分も記憶が曖昧だった。


「……なんか、恥ずかしい…」
「え?」
「ひょっとしなくても…私の寝顔、見てたんでしょ?」
「うん、まぁね。
ファリアの可愛い寝顔をね♪」
「ん、もう… リチャードったら…」

彼の胸板を叩こうとして気づく… 自分が何も身に着けていないことに。
一気に頬を真っ赤に染める

「あ、やだ。」
「何言ってんの? 今更…」
「だって… リチャードのえっち。」
「いいよ。えっちで。 でも…ファリアのしか見たくないよ。」
「もうッ!!」

グーで叩かれそうになった彼はその手を掴んだ。

「ファリア…可愛い♪」

白い乳房が朝の光の中で揺れている。

「もおッッ!!」

彼に背を向け、床に落とされていたネグリジェを手に取る。


「…僕も、一度部屋に戻るよ。」
「え?」


彼も床に散乱している自分のパジャマと下着を手に取り、身に着けていく。


「じゃ、朝食の時に。」
「え…えぇ…」



明るい笑顔を残して彼は寝室を出て行った。







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(2005/10/29)
(2015/04/23 加筆改稿)


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