rapturous -1-






ロンドン・ランスロット邸で半同棲のふたり―



あと1ヶ月もしないうちに女王陛下の命で
木星の衛星・ガニメデへと旅立つことになったリチャード。


ピアニストとして活躍し出したファリアは婚約者であり、
恋人でもある彼の身を案じていた。

「必ず生きて帰る!!」


本人ががそう言ったけれど不安は拭えない、両親と婚約者。



両家の父の判断で旅立つ前の青年のそばに
婚約者で恋人でもあるファリアをそばに―

そんなワケで乙女はランスロット邸に暮らすこととなった。




平日の朝から夕方くらいまで毎日、訓練と特別研修。
元々IQも高く、すでにオックスフォード大学を17歳で主席で卒業した彼にとって
より広く深い知識を得ること。
銃やその他のマシン類の扱いと憶えることはいくらでもあった。
身体的訓練も含まれ、ハードな日々。


さすがの彼も少々疲れを覚えて邸に帰る―

出迎えてくれるのは執事でもメイドでもなく恋人…


彼女の笑顔を見ているだけで、体も心も軽くなっていく―



自分がここまで彼女に惚れてしまうとは5年前には思いもしなかった。



可憐で優しくて自分にだけに恋してくれていたファリア―――


一緒の時を過ごすようになって解った事もたくさんあった。
幼い頃と違い、楽しませよう、安らぎを感じて欲しいと
自分に尽くしてくれているファリアがとてつもなく愛おしい―――




だからこそ、自分の欲望で彼女を傷つけたくないと…
大切に大切にしていた。

彼女とくちびるを重ねるだけで身も心も熱くなる自分がいたから。







来週にはガニメデ星に出発…


金曜の夜10時過ぎ、ドアを遠慮がちにノックする音。
誰だろうと思い、ドアを開けるとファリアが立っていた。



「あれ…どうしたの?」

「ちょっと、いいかしら?」

「あぁ。」

彼女の姿がナイトウェアにカーディガンだけなので、ちょっと驚いていた。
うっすらとボディラインが浮かんでいる。

部屋の居間で佇んで、そばにいる彼を見上げた。

「リチャード、お願いがあるの。」

「何?」

「私に…思い出を下さい。」

「はい?」

彼は思わず声がひっくり返りそうになる。


「あなたは…生きて帰ってくるって信じてる。
信じてるけど… 離れていても、不安じゃないくらいの思い出が欲しいの。」

震える声で潤んだ瞳で見上げられ、どきりとした。

「…ファリア…」

暗に彼女が抱いて欲しいと言ってきてるのが解った。

「…ごめん。出来ないよ。」

「どうして?」

訝しげに問いかけてくる。
彼は正直にはっきり告げた。

「君を… 抱いてしまえば、僕は宇宙に行きたくなくなる。
君から離れたくなくなってしまう。
だから… すまない…。」

彼の胸の中に飛び込み抱きつく。

「結婚まで、待つつもり…なの?」

「あぁ。」

そっと優しく抱きしめ、肩先を撫でる彼の手。


「何年先になるのか…解らないのに?」

「!? あ…」

腕の中の恋人は切なげに苦しげに呟く。
視線を下げると白い背とうなじが彼の目に飛び込む。

ドクン… と、心臓が大きく跳ねる。
それと共に己自身の熱が上がっていくのを感じていた。



「…僕の欲望で君を傷つけたくない。
部屋に戻ってくれ。」

冷たいようだが、きっぱりと告げる。

「イヤ。戻らない。 何されてもいい。
そばにいさせて…お願い。」

やわらかな胸を押し付けるように抱きついてくる。
パジャマとナイトガウン越しでも解る、その感触とぬくもり。
ますます熱く昂ぶる己に気づく。

「…何が起きても知らないよ。
僕だって年頃の男だ。
どんなことになるのか、解っているのか?」

少々、低い声で言い聞かせるように…
それでもなお、抱きついてくるやわらかな肢体。

「私、あなたが…ずっと好き。
初めてを捧げるのはあなただって、幼い頃から決めてた。
あなただから…リチャードなら…
何されてもいい。
愛してるから…」

「ファリア…」

自分の胸に顔を埋めて、告げてくる愛しい乙女をぎゅっと胸に抱き締める。


「待ってることしか出来ない。
あなたに今、出来ることがあるなら… 何でも出来るわ。」


彼女の決心に気づく。
確かに何年先になるか解らない結婚―
今の想いを大切にしたいと感じはじめていた。


「ぁ… ファリア…
ホントに…いいのか?」

顔を覗き込むと、頬を染めてこくりとうなずく。

「後悔しない?」

「…しないわ。」

「僕…いつ戻れるか…解らない。
けど、正直に言うと…ずっと僕も…君が欲しかった。

君はそんなこととは無縁な感じがしてて…
ずっと僕の夢の中だけのことだと思ってたよ。」


「…リチャード。」

潤んだ蒼の瞳が彼を見上げる。
カァッと一気に身体が熱くなっていく。

「もう…我慢しない。 ファリアが欲しい…。」


彼は自分の寝室のベッドに彼女を抱き上げて連れて行く。

お互い熱く潤んだ瞳。



彼女が瞳を閉じると、深く熱く甘く くちづける。
長い夜の始まり―――






to -2-


________________________________________
(2005/11/10)
(2010/03/12)
(2015/04/02)


to Love sick Menu

to Bismark Novel

to Novel menu

to Home