-9-   「remain」




それから半月ほどしてデスキュラとの停戦協定が突然、始まる。
ビスマルクチームは解散ということになり、リチャードは英国に帰ってきた。

帰ってきたその日のうちに父・ランスロット公爵を伴ってパーシヴァル公爵とファリアを訪れる。
正式な結婚の申し入れをするとその場で両家の話がまとまった。
すぐに結婚手続きが進められる。
式は…10月中旬頃という事で落ち着く。

ランスロット公爵もパーシヴァル公爵も、二人が幼い頃からこうなることを予測していた。
ただ子供のことだけが予測外のこと…




父や祖父たちは突然忙しくなる。

当人達はローレン城の応接間に落ち着いていた。


「ファリア…どうする? すぐこっちに来るかい?それとも式まで実家にいるか?」

「私…どっちでもいいわ。あなたはどう?」

艶やかな黒髪を揺らし彼を見上げ問いかける。

「今更慌てるのもな…」

しばらく考え込む二人。



「じゃあ… 式までは通い婚ということでどうだろう?」

「そういう手もあるわね…」

「式からあと、こっちに…ということでさ。」

リチャードの提案に賛同を示す。

「えぇ。そうしましょうか。メアリお母様には悪いけれど…」

二人は微笑みあっていた。

「孫を楽しみにしてるからなぁ…母上。 
ところでさ、父に言われたんだが…リィにミドルネーム付けろって言われたよ。
僕はこの”リィ”って結構気に入ってるんだけど…?」

彼女に問いかけるように言う。

「でも…”リィ=ランスロット”って少し淋しくない?
村のときは気にならなかったけど… やっぱり英国社交界に出る事になるんだし…
通称は”リィ”でいいと思うけど…」

彼女の言うことももっともだ。
将来はランスロット家の当主になるのだから。

「…確かにそうだな。考えておくよ。」

「お願いね。」


しばらくしてパーシヴァル家での乳母・ベアトリス夫人がリィを連れてきた。
彼は久しぶりに会う我が子を抱いて呟く。

「ちょっと会わない内に少し重くなったな。」

「そうね。すぐに大きくなっちゃうわ。」

「はは…そうだな。」

彼が抱き上げると笑顔を見せるリィ。
笑い声を上げて喜んでいる。

「ほら、高い高い〜」

「きゃっ きゃッ!!」

目の前の光景を見てファリアは思わず涙が出る。
その様子に気付く彼。
リィを膝に下ろし、片手で彼女の涙を拭う。

「どうした?大丈夫か?」

「えぇ…嬉しくて…」

「え?」

リチャードは思わぬ言葉に顔を向ける。

「だって…ずっとこの子と二人で…あなたとリィがいっしょにいるって…それだけでも嬉しい。
それにこの子…ちゃんと解ってる。 あなたが父親だって。今まで会えなかったのに…」

喜びの涙だと知ると彼も嬉しくなる。

「そうか…。     ファリア…」

「はい?」

「僕は…あの時、正直驚いた。
”あなたの子よ”って言われて…。
身に覚えがあるからいうのもあるけど、この子に見つめられた時…解った。
不思議とさ… 僕の血を受け継いでるって…」

リチャードの言葉に少し驚く。

「!! え…??」

「君とこうして…逢えただけで僕も嬉しいのに僕の血を受け継いでいるこの子がいる。
絶対に…守る。何があってもな。」

「…リチャード…」

彼の言葉で嬉しさが心を満たしていくのを感じる。
エメラルドグリーンの真剣な眼差しが彼女を捕らえていた。
手を伸ばせばそこにいる。
ぬくもりを確かめ合うように二人はソファの上で抱き合う。
不思議そうな顔をしてリィはサファイアの瞳で見つめていた。



「…明日はさ、二人であの丘に行かないか?」

「え?」

「出来れば二人だけで…」

「えぇ…」

そっと寄り添う二人の間でリィはいつしか眠っていた…





   ***


―翌日


天気もよく遠乗りにはもってこいの日和。
リチャードは愛馬キング号で朝10時過ぎに迎えに来た。

「それじゃ、リィをお願いね。」

乳母のベアトリス夫人にリィを託し、二人は2年ぶりにあの丘へ…

8月末ということで少々2年前より日差しがきつい。
彼は丘に上がらす、あの邸へと馬を走らせた。


「…え?リチャード?」

「今日はここにいよう。外は暑いしな。」

「…えぇ。」

彼の配慮だとわかると嬉しくなる。

2年前のあの日を思い出す。
初めて抱かれた…あの7月の夏の雨の日。


玄関の鍵を開けながらリチャードは言う。

「実はさ、ここ、僕の名義になったんだ。」

「…え?」

「あのあと…4ヶ月ほどしてから。君との想い出を残したくてさ…」

キィと小さな音を立ててドアが開く。
入るとすぐに彼が鍵を掛ける。
2階の寝室へと手を引いて連れて行く。


「あの時のままにしてある。」

「!!」

ワインボトルもハンガーもそのままだった。

「…シーツだけは取り替えたけど…。」

「え?」

「その…君の残した痕があったから…別に置いてある。」



”君の残した痕”と言われやっと気づく。

   (え…  破瓜の痕ってこと…?)



かああっと顔が熱く火照るのを感じる。

「もう…リチャードったら…」


立ちすくむ彼女を背中から抱きしめる。

「…ファリア。僕はあの日の続きをしたい。」

「!!  …ぁ。」

自分のお尻に当たる彼の熱さに気づく。

「ずっと君だけ…好きなんだ。 君しか欲しくない…」

「…私も… 他の誰かに抱かれるのが怖かった。 あなただけよ…」

振り向きそっと唇を重ねる。
一度離れ再び口づけると彼の舌が唇を割って彼女の舌を追いかける。
絡めとられ息苦しくなる。

「ん…はぁ…」

あの日と同じように膝が砕ける。
彼は抱き上げてベッドに下ろすと黒髪が広がる。
その彼の胸板を押し返す。

「待って…」

「なんでだ?」

「脱ぐから…」

ベッドから降りて乗馬ブーツと乗馬パンツを脱ぐ。
シャツのボタンにも手を掛ける。
その手を掴む彼の手。

「その先は…僕に…」

「…え、えぇ…」

ベッドに戻り、少々恥ずかしげに彼に胸元を向ける。
彼の手が一つ一つボタンを外していく。
さらされる白い胸。
リチャードは息を飲む。
2年前より豊かなふくらみ。
そして1児の母とは思えぬほど細い腰。
シャツを奪うと可憐な下着姿。
見られている恥ずかしさで顔を真っ赤にして背けている様はまるきり乙女そのもの。

「あぁ…可愛いよ、ファリア…」

あの日と同じ感情が湧く。

リチャードも自分でシャツを脱ぐ。
彼女はどきりとした。
2年前とは違う…逞しい腕の筋肉と厚くなった胸板。

「あ…」

凛々しさを増した顔が近づきキスする。
彼の手はブラを外しにかかる。
さらされる乳房を揉みしだく。

「はッ…あ…ン…」

硬くなりだしたその先を指先でこねるとさらに上がる声。
彼の舌が耳元を這うだけでぶるりと体が震える。
自分でも解る熱い疼き。

   (もっと触れて欲しい…  リチャード…)



片方の乳房を揉まれ、もう片方を吸いたてられる…
彼の唇の熱さが自分を溶かしていく―――


リチャードは2年前と同じ反応を見せる彼女に嬉しくなる。
そして何より豊かになった胸のふくらみの感触を指と手のひらで愉しむ。

「あ…んッ…!」

するすると肌をすべり降りた彼の指先が熱く潤む秘唇に触れる。
既に太ももまで滴っていた。

「ファリア…もうこんなに…」

「やぁッ…言わないで…」

消え入りそうな声で顔を真っ赤にしてイヤイヤをする。
彼の指が動くと水音が響く。

「やぁあんッ!!」

びくびくと身体を震わせて身悶える。熱い疼きで苦しい。

彼はその艶っぽい顔と喘ぎ声を聞いているだけで、腰に衝撃が走る。
すぐに入れたくなるがこらえる。
2年前は苦痛しかあげられなかったことを後悔しているからこそ、
今は気持ちよくさせたいと思っていた。

「やッ…!!」

花芽に触れられぞくりと脳天まで届く甘い電流が走る。

「…ファリア…ここ?」

彼の言葉に応える余裕はなかった。

  (やだ… 変になっちゃう… ソコ… いやぁ…)


涙を見せ震えるその姿がたまらなく可愛い。


  (その顔をもっと見ていたんだけどな…)

白い太ももの間に顔を埋める。
あふれ出る蜜を舐め取り鼻先で敏感な芽に触れる。

「やぁッ!! はっ …あぁ…」

蜜壺を掻き回され敏感な芽にキスした。
びくびくと全身をわななかせて身悶える。
視界が白く弾けファリアの頭の中には彼のことしかなかった。

「あん…はぁ…」

大きく呼吸するたびに揺れる白い胸。

「やっぱり今も可愛すぎだよ…」

やっと呼吸が落ち着いてきた彼女がうっとりとした瞳で彼を見上げる。

「もっと…可愛い声聞かせて…」



彼は彼女の上半身を抱き起こす。
重力で乳房の形がはっきりとする。
唇で片方の乳首を含み、開いている手で秘唇に触れる。


「はっ…あぁん…」

彼は自分の耳元近くで喘ぐ声を聞き強烈な快感を覚える。
熱く甘い声だけで自分がイってしまいそうになる。
イヤらしい音をわざとたてて蜜壺を掻き立てた。


「やぁああっ…はぁあぁ…」

びくびくと震え彼の指を締め付ける。
冷静を装って彼は問いかける。

「ファリア…切ないか?」

陶酔した瞳で彼を見つめこくりとうなずく。

「ここに…欲しいか?」

水音をわざとたてる。

また真っ赤な顔でうなずく。

「ちょっと待って…」

彼は枕の下に用意していたアルミの袋を破く。
己に着けるのは少々滑稽に思えたが仕方がない。
少し恍惚とした彼女の脚の間に身体を入れる。

「…愛してるよ…」

黒髪を撫で上げ唇を重ねると抱きついてくる彼女。
ふっと離し彼は身を沈める。
昔より少しはラクに入れるかと思ったがそうでもなかった。
まるで初めてのときのように少しキツイ。

「…う…」

彼の整った眉が歪む。
彼女も彼の熱と存在感を埋め込まれ、歯をかみ締めこらえていた。

「…んッ…」

壁に突き当たったことが解るリチャード。

「あ…あ、やっぱり君だけだ…」

自分を包み込む彼女のやわらかな熱さに身が震える。
あの日と同じうねりに心も溶けそうだった。



彼女の心の中は…自分を求めてくる彼のことでいっぱい。

  (もう…もう何もいらない… 彼がいれば…)



しばらくそのまま抱き合う二人。


「解るかい? …僕が…」

「えぇ… 熱くて…私を満たしてくれてる…」



ゆっくりと律動を始める。
彼を離したくなくて無意識に締め付けていた。

「…ぅうッ…」

彼は歯を食いしばり、すぐに爆ぜてしまいそうになるのをこらえる。
ギシギシとベッドが軋む音が響く。
リチャードの背に回した彼女の指先が食い込む。

「く…ッ…」

彼もそろそろ限界だった。

「う…ぁあッ!」

彼にぐいと激しく突き上げられると声なき声を上げて、絶頂へと達してしまう。
彼もブルブルと震え、一気に爆ぜる。
コンドームの中に入りきらず逆流していた。

彼女の四肢が余韻でふるふると震えていても彼は止まらなかった。
まるで2年分を吐露するように―



窓の外はまだ太陽が正午を示していた。




   ***

夕方5時を過ぎるまでベッドにいた二人。




ローレン城へと戻る馬上で彼は切り出す。

「ファリア…頼みがある。」

「なぁに?」

彼を見上げるサファイアの瞳。

「その…ちょっとこんなトコロで言うことじゃないんだkが…」

奥歯に何かが挟まったような言い方をするので訝しく思う。

「…??」

「その…二人の子供について。」

「え?」

思いがけない話題に驚く。

「当分、作るつもりはない。リィもいるしな。 だから君の協力が必要だ。
だから…」

彼が何を言いたいのか察する。

「…ピル?」

「あぁ。すまないけど…」

少々、申し訳なさそうな顔をする彼を可愛く思う。

「…いいわ。」

「本当に…いいのか? 自分で言い出しておいてなんだけど…」

正直に自分の考えを口にする彼女。

「私たち…まだ10代よ。…25までにあと一人は欲しいけど…今は…」

「ありがとう。すまない。」

「今度、リィの検診の時にでもDr.頼んでみるわね。」




ローレン城に着くと彼は後ろ髪を引かれる思いで去ってゆく。







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(2005/6/11&12)

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