夜の妖精      −1−






その運命の日は突然訪れた。


木星の衛星・ガニメデ星

地球人が開拓し居住するようになった殖民星。
近年は地球からの観光客も増え、人口も増加の一途を辿っていた。





 地球発ガニメデ星行 アテナU号


順調にガニメデ星へと向かっていたこの船を襲撃したものたちがいた。

10年ほど前、侵略を仕掛けてきた異星人デスキュラ。

彼らが狙っていたのは軍の補給物資を運搬する船だったのだが、間違って観光船を襲撃した。
しかし彼らはここにも多少の食料があると知ると略奪していった。


緊急脱出用のポッドで難を逃れた乗客乗員。
だが残念なことに地球連邦軍によって乗っていた人たちの60%は死亡が確認された。
そして18%の人がポッドごと行方不明とされ、生き延びたのはわずかに22%だったのだ。


その行方不明とされたポッドのひとつに少女とその母親が乗り込んでいた…



事件から2日後…
漂流していたそのポッドを回収したのは ガニメデ星で人身売買をしているダニエル=ジョーダンという男。
中にいるのが女子供とわかって商売になると思った男はすぐさまポッドを開けさせた。
残念なことに母親と見られる女性はすでに息を引き取っていた。
しかし12,3歳とみられる娘は奇跡的に生きていた。

男は娘をガニメデ星で売りに出した。




そして売られた先は…
ガニメデ星のど田舎・グレン鉱山の村にある安ホテル&バーのオーナーの元に下働きとしてだった。



お嬢様育ちの少女は要領が悪くいつも怒鳴られていた。
びくびくと脅えながらも掃除や洗濯、皿洗いまでやらされていた。


少女は今まで自分はなんという恵まれた環境にいたのかが身に沁みてわかった。


母親が死んでいたのなら父も弟も死んだ…

そう思った少女は懸命に健気に生きていた。

しかしまだ運命は残酷だった…



彼女が15歳になった頃。

バーでピアノを弾いていた少女を気に入った男が現れた。


男はオーナーに頼み、彼女を買ったのだ。

その夜から少女の地獄が始まる…


彼女のことを口コミで聞きつけた男達が毎夜、現れた。
まだ幼さの残る少女を弄ぶ…






あの残酷な夜から3年が過ぎた。

少女は…18歳の憂いを帯びた美しい乙女となっていた
相変わらず昼はバーの片隅でピアノを弾き、夜は歌姫。
そのあとは…










デスキュラがガニメデ星に侵攻しつつある最近。

ある日、ビスマルクチームがデスキュラが潜伏しているという情報を掴んでグレン鉱山の村へと向かう。



レフトコンソールのリチャードが進児に進言する。

「進児、あの村は人口僅か300人強の小さな村だ。3人で内偵というのは無理かもしれないぞ。」

「そうだな。3人で村に入ると目立つな…」

少し考え込む進児に再びリチャードが意見する。

「僕がひとりで調べに行こう。3人の中では僕が適任だろう。」

「そうだな。頼んでいいか?リチャード。」

「勿論だ。」

「おい、あんまいいカッコすんなよ!」

「そんなつもりはないさ、じゃ。」

リチャードは颯爽とドナテルロにまたがり村へと向かう。








村の入り口でドナテルロから降り、待つように告げる。

昼のためか村の中に人気はない。

不自然なような自然なような…
リチャードは訝しく思いつつも村の中を歩く。

何処からともなくピアノの音がする。

どこかで聞いた音…

「あ…」

ふと思い出したのは幼い頃、幼馴染の少女がよく弾いていたあの曲。

『ショパン…?』

音を辿り行き着いた先は、小汚いホテル&バー。

軽い木戸をくぐるとそこは安酒場。

店内はまだ開店前らしくテーブルに椅子が乗せられたまま。
カウンターの中ではバーテンらしき男がグラスを磨いていた。

その手前の片隅でピアノを弾いている乙女を見つけた。

瞳を伏せ、穏やかに演奏を続けていた。

「兄ちゃん、旅行客かい?」

「えぇ、まあ。」

「飲みたいんだったらカウンターでな。」

彼は言葉に促されるまま、カウンターの前のシートに腰掛ける。

「何にする?」

「あ、じゃあ、エールを。」

「あいよ。」

バーテンは奥の樽からエールを注いで彼の前に置く。
その間ずっと彼は乙女を見ていた。


長い黒髪に透き通るような白い肌。
彼女の憂いをピアノの音が物語っていた。
そしてその胸元のペンダントに気付く。


「…兄ちゃん。あの娘が気に入ったのかい?」

「! …ええ、まあ。綺麗な乙女ですね。」

「…安くしとくよ。」

ぼそっとバーテンは彼に囁く。

「一晩500ドルだがね…いまなら400にしてもいいさ。どうだね?」

「!!   …あなたは…あなたは彼女にそんなことをさせているのですか?」
彼は驚く。
怒る彼に腰が引けるバーテン。
そのとき、初めて乙女が声を発する。

「…。用がないなら、出て行ってくださる?」


その声に青天の霹靂。
考え込む彼。
「…彼女の身請けをするにはいくら必要なんだ?」

「!!!」

バーテンも乙女もその言葉に驚く。

「…… 2万ドルでさ。」


彼は店を飛び出し、村の銀行で現金を下ろしてきた。

アタッシュケースごとバーテンに差し出す。
バーテンは金を数え始める。

しっかり数があっていると笑顔のバーテン。
「まいど。」




「何故…?」

戸惑う乙女の手を引くリチャード。

「部屋を使うなら上の部屋を使いな!」

鍵を投げてよこすバーテン。
彼は受け取り、2階へと向かう。





NEXT
________________________________________________________________________________
あとがき(2004/11/1)

いきなりアダルトなリチャード×ファリア編です。
どないせーっちゅーねん!
やっぱり暴走するのかリチャード(汗)

(2005/2/22加筆)