Togeter
その日、あたしは出会ってしまった。
自分の運命を変える男に…
あたしはバーディ=ショウ。
気がつけばパパの意向で入れられた太陽系Gメンから飛び出して、気ままな旅をしていた。
女の一人旅は危険だから帰って来いというパパの言葉を無視していた。
そして出会ったのだ。あの男に。
彼の名はロック=アン=ロック。
彼はJ9ランドの射撃場で見かけたナイスガイだった。見惚れるほどの銃の腕前。
それだけじゃない、顔もイカしていたのだ。
そして成り行きのカジノで出会ったI.Cブルースとおとぼけビート。
そして彼、抜き打ちロックと4人の賭け旅行がが始まった。
ついでにジミーとスージーも気がつけば仲間になっていた。
ブラディシンジケートを敵に回しての危険だけどスリルのある旅だ。
一応、太陽系Gメンに入る前の訓練センターで色々な事を学んだ。
それが今もの凄く役に立っている。
女一人で宇宙を巡るには必要な事だった。
今更ながらパパに感謝している。
ブルースが手に入れた宇宙トレインでの旅はスリルと命の危険が満ち満ちていた。
あたしも少しは役に立っているみたい。
旅が始まって1ヶ月経った頃。降り立ったカンターレ星で2年ぶりに姉・シャロンに再会した。
まさかこんなところで会うなんて思いもしなかったあたしは驚くしかなかった。
シャロンのナイトクラブの看板を見た時、パパとママにどう伝えようか考えてしまった。
あたしらしくない。
港で考え込むあたしを慰めてくれたのもロックだった。
姉や両親のことを彼に話すなんて想像もしていなかった。
ロックはそんなあたしを受け止めてくれていた。
「人生、色々あるもんな。」
その言葉がロックの口から出た時、正直嬉しかった。
そして、シャロンの姿を見たのは教会の塔の上だったんだもの。
飛び降りたシャロンをロックが機転を利かして助けてくれた。
あたしの姉とはいえ赤の他人の危険を顧みず助けてくれたロックにあたしの心は決まったみたい…
このあたしがマジに惚れちゃった。
まずいまずい、JJ9メンバーに知られたら無理やり告白させられそうだわ。
でも隠すつもりもオープンにするつもりもないのよね。
いつか伝えられたらそれでいい。
そう思っていた。
旅が始まって4ヶ月が過ぎた頃、彼に異変があった。
廃墟となった街の片隅で手に入れた古いラジカセから聞こえてきたキレイそうな女の声。
どうやらロックの思い出の人みたい。
あたしは無意識に嫉妬していた。
会ってもいないその女性に。
嬉しそうなそれでいて切なそうなロックの顔を見たらたまらなく苦しくなった。
その女性はハートブレイクシティというアウトローが住む街の中心にあるカジノにいた。
無骨そうな男相手にイカサマをしていたらしい。
ビートとロックが絡む男から彼女を助けていた。
確かにその女性は美人だった。
もう少し若ければ瑞々しい美しさを持っていただろう。
あたしが見たその女性はどこか悲しい感じがした。
その夜、町の人たちがあたしたちJJ9を歓迎してパーティを開いてくれた。
ホールの中央にはロックバンドが流行の曲を演奏していた。
ノリのいい曲にノッてみんなははしゃいでいた。
あたしはそんな気分じゃなかった。
どうしてもロックとあの女性の関係が気になってしょうがない。
とりあえず飲むしかなかった。
でも、飲んでも酔えなかった。
ボトルを何本開けただろう……
ふと視線を上げると向かいの壁際にロックがひとりでたそがれているのが見えた。
思わず、新しいボトルを片手に彼に近づく。
ちょうど音楽が激しいロックナンバーからバラードに変わった。
「はぁーい、ロック。随分ブルーじゃない?」
「ロックの後のバラードはジーンと来るぜ。」
彼は淋しげにつぶやく。
あたしは持ってきたボトルの中身を彼とあたしのグラスに注ぎ、
殻になったボトルを投げた。
「意味深なおっしゃりかた。」
あたしは彼の横に座り、グラスの中身を口に流し込む。
彼も飲んでいるが酔ってないみたい。
「ところでロック。あのひと…?」
彼を見上げて今までいえなかった言葉をつぶやく。
「……初めて腕を組んで歩いてくれたひとさ。」
彼は珍しく物憂げにつぶやく。
グラスのお酒を一口含んであたしは言った。
「男の初恋って、年上の人がおおいんだってね…」
そう言った直後、彼女がやってきた。
「はぁーい。ロック。」
「やぁ。」
彼女はあたしを一瞥したあと、彼にこう告げた。
「どう?お散歩しない?ろくでもないところだけど星だけはきれいよ。」
呆けるロックにあたしは精一杯の笑顔で彼を送り出した。
「ロック。少し酔ったみたいよ。外の風に当たってきたら?ねっ?」
彼はあたしの言葉に面食らっていたけど行くように仕向けた。
「さぁさぁ。」
「お…おい!」
「じゃあ、少し借りるわね。」
彼女の笑顔があたしには痛かった。
でも顔でほほ笑んで心であたしは泣いていた。
「はぁ〜い、ごゆっくり。」
手を振って彼を笑顔で送り出す。
訝しがりながらもロックは彼女と出て行った。
あたしはふたりが出て行くのを見届けた後、また酔えないお酒を口に流し込んでいた。
途端に自分の性格が嫌になる。
外面がいいのはママのせいね。
外でふたりが何を話しているのか気にならない訳じゃない。
こんなに彼に対して想いがあったなんて自分でも驚く。
目の前では再びロックビートが流れ出し、みんなが踊っている。
普段のあたしなら平気な顔して踊っているのに。変な気分。
とにかく飲みたい気分なのだ、あたしは。
一人で飲んでいるとブルースが近づいてきた。
「やれやれとんだ騒ぎになってしまったな。 …ところでロックは?」
あたしに聞くなんてブルースも酷な人ね。
「おデートと。おデート。」
半ば自嘲気に言ってしまう。
その後しばらくしてブラディシンジケートが町を襲ってきた。
目的はあたし達だ。
サスライガーに変形してやつらを追っ払い、裏切り者を捕まえた。
騒ぎが収まったのは明け方だった。
それからJJ9マークを印したブルースは町のリーダーと挨拶をしていた。
傍らで、あたしはついロックに聞いてしまった。
「ロック、ジュディの事…どう思っているの?」と言おうとしたのに
彼の手に唇がふさがれて、途中までしか言えなかった。
「チッチッチッ。」
彼は指を揺らしてあたしを見る。
その寂しげな笑顔が、その目が言いたい事があたしには解った。
(もう気にすんな)
そう言ってた。
あたしはトレインに向かって歩く彼の腕に自分の腕を絡める。
それがもの凄く自然に思えた。
昔は彼女が抱いた腕を今、あたしが抱きしめる。
切ないけど、苦しいけどこれがあたしの精一杯の想い。
あたしの気持ちに気づいているの?
だとしたら意地悪ね、ロック。
1stあとがき(2002・10)
あはは…。#22を見て思ったバーディのロックに対する気持ちみたいなのを書いてしまいました。
どうみてもこの回を見たらバーディが彼を好きみたいなのがバレバレ(?)
このあとも二人の仲がいいのがちらほら出てくる。
ロックが少し浮気性っぽいだけなんだと思うんだよね〜。
多分バーディは出会った頃からロックを好きみたいなのだけど
ロックは気づいてないのか、鈍いのか?
私の中ではふたりはラブラブなので本編見るとやきもきしちゃうよ〜。
2ndあとがき(2003・9)
いや〜ちょっと前に書いたものなんだけど…
てか1年近く前か?
恥ずいですね。
JJ9メンバーは謎が多いので色々と書きやすい気がします。
主人公だけあってロックは過去がはっきりしている部分が多いと思います。
バーディは謎多き美女。
でも家族全員出演しているんだよね、これが。
サスライガーのDVDをお持ちの方は見ながら読むとシーンが解りやすいかも。
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