胃腸内服薬

「すみません」
 キョーラーク星のとある町の薬局で、スージーが店員に声をかけた。
「いらっしゃいませ、何をお探しですか?」
「胃腸内服薬がほしいんですけど…」
「普通サイズのと、Sがありますが」
「一番効きそうなものをください」
「どちらも効きそうですが」
「じゃ、普通サイズで日付の新しいものをください」
 スージーが店員と話をしている間、ジミーは別のコーナーでうろついていた。
 何故、ジミーとスージーが薬局にいるのかというと…。

 回想スタート。
 そもそものきっかけは、ブルースがひどく落ち込んでしまったことからはじまる。
 ラーナ星で失踪したトップモデルのステファニア・バルドンヌの一件で、ブルースは一種の罪悪感を抱いてしまった。
 身を隠していた空き別荘に流れ弾が当たったと知った時、ブルースは落胆して、
「私が殺したんだ。私と共にトレインに連れてくればよかった…」
 ベルナー湖でレージームーンの花をトライマークにして、ラーナ星を去った後でも、まだ立ち直れなかった。
 そんなブルースを元気づけようと、ロックとビートが行ったのは、何と酒を飲ますことだった。
 最初は乗る気がなかったブルースに、ロックとビートが「辛気臭い顔をするな」と無理矢理飲ませた。
 その飲ませ方はすごく下品だった。嫌がるブルースの口に酒を直接瓶ごと飲ませる、いわゆるラッパ飲みだった。
「ふぐ、ふぐ、ふぐ、ふぐぅ…(勘弁してくれよ…)」
 いやというほど飲まされて、グタグタと文句を言い、挙句の果てには意識を失った。
 翌朝になって、ひどい吐き気に襲われて、トイレで何度か吐き出した。
 ロックもビートもひどい二日酔いになっていた。
「ブルースさん、大丈夫ですか?」
 スージーが声をかけると、
「大丈夫じゃないんだ…」
 ブルースがそう言った後、またトイレへ駆け込んだ。
 数分後にトイレから出た後で、
「スージー、すまないが薬局へ行って、胃腸内服薬3本を買ってくれないか…」
 財布から電子マネー端末を取り出し、スージーの電子マネー端末に30ボールをデータ転送すると、
「お釣りは小遣いとして取っておきなさい…」
「わかったわ。無理しないでね、ブルースさん」
 これで回想はジ・エンド。

 スージーが日付の新しい胃腸内服薬を3本購入して、ジミーの腕を引っ張りながら薬局を去る。
「ジミー、別のコーナーをなに見てたの?」
 ジミーは言えなかった。彼が別のコーナーで男がつける例のものを。
 しばらくして、J9-III号にもどると、
「ただいま」
「でかい声を出すんじゃねぇよ、スージー」
 ロックが青い顔をしながらソファーで横たわっている。
「弱ったオレちゃんたちを労わる気がないの?」
 ビートも愚痴をこぼすと、
「自業自得だよ、ロックさんにビートさん。ブルースさんに無理矢理酒を飲ますから、同情の余地なしだよ」
 ジミーが袋から胃腸内服薬を取り出す手伝いをする。
 箱から胃腸内服薬を出し、瓶をよく振って、キャップを開けてから、ロックとビートとブルースに渡す。
 3人がぐいーっと飲み干す。
「うえっ…」
 とロック。
「にっがっ…」
 とビート。そしてブルースが、
「でも効くんだな、コレが…」
「と確信できるくらい、3人ともお世話になってるんすね、コレが…」
 ジミーのツッコミに、3人はコップにミネラルウォーターを注ぎながら、言葉を失った。
「・・・・・・・・・」
 図星だった―あ然とするジミーを尻目に、3人はミネラルウォーターをごくごく飲む。
 ブルースが深いため息をしながら、空になったコップをテーブルに置くと、
「ところでジミー、D・Dから何か連絡が入っていないか?」
「30分前に『おいしい話を仕入れてきた』という連絡が入ったけど…」
「そうか。そろそろ着替えておくか…」
 とブルースが自室へ向かおうとする。
「ブルースさん」
 スージーが声をかけると、
「あの、大丈夫ですか?」
「何が大丈夫なんだ?」
「あのモデルさんのこと、ひどく落ち込んだけど…」
 スージーの一言に、ジミーが慌てて、
「スージー、ブルースさんに何を言ってるんだ?」
 だが、ブルースは堂々とした口調で言い返す。
「確かに罪悪感が残っているが、今の私にすることはただ一つ、残りの惑星を残りの時間内に渡り切ることだ。彼女への償いはその後で考えればいい」
 スージーの顔がすぐに明るくなった。ブルースが立ち直ったのだと。
「あっ、ロックにビート」
 ブルースが口を開いた途端、ロックとビートがビクッと足が止まった。
「人を慰めるのもいいが、酒を強制的に飲ませる行為には感心できんな…」
 と釘を刺されて、すっかり落ち込んでしまったロックとビートであった。
 それから1時間後、おいしい仕事を仕入れてきたD・Dが、バーディの入浴シーンを見とれてしまって、崖に追突してしまった。
 顔を赤くなりながら、D・Dがその経緯を話すと、ブルースがサロンに現れた。
 その話が、キョーラーク星の北半球にあるミーブの谷に現れる幽霊退治だった。

Go to the 15th episode.

《あとがき》
 サスライガーの第14話と第15話とのタイムラグを書きました。元ネタはCLAMPの『XXXHoLiC』の第1巻からです。私の書く小説は、ラブシーンばかり書いてしまう傾向があるので、それを抜くのが大変でした。





*****By 松山 瑞樹
平安朝美人様から頂きました☆ありがとうございます!!
最後の方のDDの事故シーンはいつ見ても笑えますねぇ〜☆
バーディさんナイスバディですしね!!


to sasuraiger novel
to novelmenu

平安朝美人様のサイトへ→Linkページに!!