視線だけの約束
ビスマルクチームのメンバーとしてデスキュラを倒した僕。
英国に戻ると…英雄扱いとなってしまった。
ただのランスロット家の跡取りだった僕は
英国社交界のパーティと言うパーティに招待されることとなった。。
すべてにはいけないので…1日1回と決めている。
今夜は…名士・ハートン卿60歳のバースディパーティ。
英国内の名だたる名士と呼ばれる人たちが招待されていた。
僕は父と共に出席。
そして…この夏、僕は失っていた恋人ファリアを見つけ出すことが出来た。
彼女もパーシヴァル公爵家の令嬢として、
父親であるパーシヴァル公爵と祖父・ローレン卿と共に出席している。
彼女と1曲でもいいから踊りたいと思いつつ、
僕は貴族や政治家と言う人たちに囲まれ会話している。
会話していても心ここにあらずだ。
気づけば彼女ひとり。
今すぐにでもそばに行きたいのだが、そうは簡単に行かなかった。
今、、目の前にいるのは…英国首相その人。
珍しく壁の花をしている彼女に声をかけた人物は
このパーティの主役・ハートン卿。
しばらく会話をしているなと思ったら
卿が彼女の手を取り、フロアでワルツの調べに乗る。
(あ…)
僕は内心、面白くないと感じていた。
「ランスロット卿…?」
「…すみません。何のお話でしたか?」
訝しげに問いかけてきた首相に不躾と思いつつ言葉を返す。
「あぁ…火星の…」
すでに耳に入ってない。
視線の先には楽しそうに踊るハートン卿と彼女。
緩くウェーブさせた彼女の黒髪が白い肌に映えてとても美しい。
揺れるそのやわらかな髪に触れてみたい衝動に駆られる。
今すぐ、この場を離れて、彼女のそばに行きたい。
僕はジッと彼女を見つめた。
彼女は僕の視線を感じたらしく、卿の肩越しに見つめ返してきた。
(きっと彼女は解っている… 僕の望みを…)
首相が議員に声を掛けられた隙に僕は人の輪から外れる。
ハートン卿と踊り終えた彼女に近づく。
他にも男が近づくのが見えたが無視した。
「や。久しぶりだね。」
昨日、パーシヴァル邸で会っているけれど、
僕はわざとそう言う。
「えぇ。ご無沙汰しているわね、卿。」
極上の笑顔を僕に向けてくれる。
僕達のやり取りを何人かが聞いている。
「1曲…踊っていただけませんか?」
「勿論、喜んで…」
彼女ははにかみ、僕に手を預ける。
フロアに出て、彼女の腰に手を回して、
曲にあわせてステップを踏むと、
彼女のデビューパーティを思い出す。
僕のエスコートで英国社交界にデビューした彼女は
公爵家代々に伝わるティアラに負けぬ美しさはまるで童話の姫君。
今、腕の中にいる彼女はデビューパーティの頃より更に美しくなった気がする―
不意に彼女に囁く。
「な、さっきの…解ってたんだろう?」
「え?」
「ハートン卿と踊ってた時さ。
僕が君と踊りたいって…」
一瞬息を飲む彼女。
「えぇ… よく解ったわ。それに…」
「それに?」
「"僕以外と踊るな!"でしょ?
ハートン卿は今日の主役だから例外…」
思わず僕は笑ってしまう。
「よく解っているじゃないか…
あの一瞬で。」
「そうね… でもそれはあなただから。
それに…これからもそういう約束なのでしょ?」
「そう。」
あの瞬間、僕達は視線だけで… 約束を交わした…
Fin
_____________________________________________________________
(2005/10/1)
to 10 for lovers
to Event Novel
to Bis Novel
to Home