shooting star



学校が夏の休暇に入り、バーディは父の別荘で過ごすこととなった。


勿論、父も一緒に。
悲しいことに2年前から母と姉・シャロンはいない…

12歳になったばかりのバーディは母と姉のいない淋しさをずっと感じていた。







別荘の近くの湖のほとりを散歩していた少女。
美貌の女優と謳われた母の血を継いで、傍目に見ても可愛い。


そんな少女を誘拐して悪戯しようとする不届きモノがいた。

「お嬢ちゃん。 お兄ちゃんと遊ばない?」


なかなか男前だが、バーディは一瞥するだけで歩き出す。

「間に合ってるわ。」


すたすたと歩き出す少女を後ろから抱きとめて、草むらに連れ込もうとするが
たまたま通りかかった青年が、その様子に気付く。

後ろから殴りつけ、少女を助け出した。


「あ…ありがとう。」
「大丈夫かい? 真昼間とはいえ、変なやつが世の中多いから気をつけないと。」
「うん。」


青年の腕に小さな傷を見つけたバーディ。

「怪我してる。」

「大丈夫さ。」
「ううん。家に来て。
手当てしなくちゃ。」



少女の手に引かれて青年は白い別荘に連れて行かれる。
父・ビンセントは少し心配していた。


そんな娘が見慣れぬ青年を連れて帰ってきた。

「パパ〜」
「バーディ?! どうした何かあったのか?」


父を心配させまいと思ったが
青年を連れてきた理由を話さなければならない。


「パパ、この人がね 私を助けてくれたの。」
「何!?」
「あのね… 草むらに連れて行かれそうになった私を助けてくれたの。」


娘が悪戯されそうになってたと理解する。

青年の顔を見るビンセント。
人のよさそうな顔。
青年は真摯な目で見つめ返す。


「僕はコレで失礼します。」


立ち去ろうとする青年をバーディが引き止める。

「ダメよ。傷の手当てしなきゃ。」
「じゃ、とにかく中へ。」


ビンセント親子に促された青年は入らざるを得なかった。


結局、バーディではなくビンセントが救急箱を持ってきて、手当てする。
怪我は大したことはなく、ちょっとのかすり傷と打ち身だけだった。


青年と父の前に珈琲を持ってくるバーディ。
毎日、父のために淹れているので手馴れていた。


「私はビンセント=ショウ。娘を助けてくれてありがとう。」

「…!? あなたが? ノンフィクション作家のビンセント=ショウ??」

驚く青年の顔を見てビンセントは問いかける。

「私を知ってくれているのか?」


まだこの頃、爆発的ヒット作品を発表する前であったビンセント。


「えぇ。あなたの作品はすべて読んでいますよ。」

「そうでしたか…」

「私は写真家のロベール=バージと言います。」

名乗った名前にビンセントも驚く。

「確か…この間、銀河大賞を取ったと報道されていた…?
新鋭の写真家の?」

「ご存知でしたか… 光栄です。」



父と青年は会話が弾み出す。

ノンフィクション作家とドキュメント写真家…
お互い何かを感じ取っていた。



傍らにいた少女・バーディはそんな青年に見とれていた。

背は高く180センチはある。
栗色の髪と濃い蒼の瞳。
彫りの深い凛々しい横顔。

今まで、母の知り合いの役者たちと会ったことはある。
しかし目の前の青年がどんな男前の俳優より、
逞しく凛々しく見えていた。




少女は彼に淡い恋心を抱き始める―




青年は3日間滞在して、別荘周辺の写真を撮影していった。
勿論、父と自分も被写体として撮ってもらう。








   *


ロベールが帰ってからしばらくして、パーティの招待状がビンセント親子の元に届いた。

彼の25歳の誕生日パーティ。


ロベールは地球の財閥の御曹司でもあった。
兄がいると言うことでトップにはなれないが、
それでもいずれは重責を担うことになる。



そのパーティで少女は生まれて初めて失恋を味わう。


ロベールの傍らにはマリーという婚約者。
財閥の重役の娘…
23歳の金髪の奇麗なグラマラスな美女。


少女の淡い片思いはあっけなく砕かれてしまった…






fin
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あとがき(2005/10/2&3)
バーディの過去話第2弾です。
前作から丸1年経ってます。ごめんなさ〜いm(_ _)m

バーディ・幼い日の初恋&失恋。
う〜む… 恋の遍歴を描きたいなと画策中ナリ♪






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