Happy Happy Birthday |
東邦学園中等部 二学期始業式 9月1日 ひとりの編入生がいた。 篠原薔子 東邦学園では有名な篠原兄弟の中のひとり。 次女で7人兄弟の下から2番目。 そして父にとってたった二人しかいない娘のうちの一人である。 編入早々、周りに注目されていた。 日本人離れした白い肌。 柔らなそうな髪。 ちょっと神秘的な瞳。 注目の的になるのは仕方がなかった。 その日、薔子は15歳になった。 日本で初めて迎えた特別な日。 弟・彬と共に家に帰ると仕事に行ったはずの父が出迎えた。 「お帰り、薔子。彬。」 「なんで、いるの?」 二人の質問に答えることなく父は薔子に言う。 「これから出掛けるぞ、薔子。」 「はい??何処へ? 「銀座に。」 「銀座って?」 「薔子、今日はお前の誕生日だ。私がお前の欲しいものを何でも買ってやるぞ! 今までの15年分だ!」 仰天している薔子に制服から着替えるように言った父。 とりあえず着替えた薔子を車に乗せて父は嬉々として出掛ける。 車の中で薔子は尋ねる。 「なんで銀座なの?」 「そりゃ、お前。何でも揃うから… デパートは勿論、ブランドショップも立ち並んでいるから お前が欲しいものがあると思ってな。」 「…」 少々あきれた薔子だったが父が嬉しそうにしているからそれ以上何も言わなかった。 そして銀座到着。 いくつもの有名デパートにブランドショップ。 薔子はパリでは気を使って買えなかったバルビエ以外のブランド物の洋服を買ってもらう。 パリでは一応、有名モデルだったからバルビエ以外の服を着る事は、めったになかった。 だから心置きなく、シャネルだのバーバリーだのの服を買ってもらう。 少し嬉しかった。 しかし本当の喜びはこれからだった。 買い物を追え自宅に帰ると… 兄&姉&弟の6人が出迎えてくれた。 「誕生日おめでとう!薔子!」 今に置かれていた大きなバースディケーキには「Happy Birthday !」と書かれていた。 「これ、私が焼いたのよ!」 姉の柊子が微笑んでいた。 「俺達からはコレな!」 兄4人と弟からプレゼントされたのは… [Syouko]と書かれたルージュと真紅の薔薇100本だった。 突然の大きなプレゼントに驚く。 受け取った薔子はぼろぼろと泣き出した。 生まれて初めて…大勢の家族に祝われたことが嬉しくて、思わず涙が出ていた。 「あ…ありがとう。森兄、椋兄、榿兄、楓兄、彬…それに柊子姉さん…父さま…」 今まで家族という暖かい繋がりが希薄だった少女にとってそれはとてつもなく幸せな事。 まだ日本に来て4日目の薔子にとって、突然の僥倖だった。 ______________________ あとが(2004/8/30) 薔子が家族の愛を初めて感じたときです。 それまで学校の寮で友人達とのお祝い… バルビエのモデル仲間からのプレゼント… 母がいた10歳頃までは二人でお祝いしたり。 そんな薔子にとっての初めてのたくさんの血縁者からの祝い… これ以上の幸せがあるのでしょうか? Event NOVEL MENU |