ardor -8-



パルヴァ国王女がビスマルク国に来て、1週間後…

早々にふれを出し、ふたりの結婚式が執り行われる。


城の前の広場には一目、美しいと評判の王女の花嫁姿を見たい国民が集まっていた。



ふたりもビスマルク王家のメンバーも満面の笑み。。

貴族や大臣、国民に祝われ、ふたりの式は厳かに進んでいく。

ハイウエストのドレスのため妊娠4ヶ月目を越えたというのに、
あまり目立たないため誰も言われるまで王女が身ごもっていると気づかない。



つつがなく、無事に式は終了。
ただ…彼に憧れてた女性や、玉の輿を狙っていた貴族の娘達が
少々悔しがっていたが、妃となる美貌の王女を見て諦めていた。


そんな中、一番悔しがっていたのは婚約までこぎつけたのに
破棄された貴族の娘。。。
鬼気迫る空気は周りの人間も驚くほど。
それはまるでかつて彼の先祖に殺された女達の怨念の形相。





   ***


ふたりが幸せな新婚初夜を迎えた。

やっと典医からつわりもおさまったことも合って
夜の事に許可が下りる。


そのこともあって、新郎の皇太子は久々に妃となった彼女を抱く。




皇太子の夜の寝室にふたりの甘い嬌声が響く。





深夜…

ふたりが抱き合い眠りに落ちていた。


妃になり、幸せを感じていたファリアはふと目覚めた。

   (…何…?? この感じ…?? )


肌がざわめき、不穏な気配を感じる。

もともと曾祖母が良き魔女だったこともあって、
たまに霊が見えたりすることもあった。


   (誰か…いる!? まさか… 彼の先祖を呪ったって言う…女性かしら? )


ベッドから降りようとすると金縛りにあう。

   (あ!! う… やっぱり… 「いる」んだわ…)



身を起こしたファリアの目の前に悪鬼の形相の女性の顔が迫り来る。

   (ひ…っ!!)


『おまえ… こすいことを…』

「え?」

『その男を憎みつつも、愛しおってからに… よくもわらわの裏をかいたものぞ』

「…そうね、憎んでいたわ彼を。
でも…今は…」

毅然とファリアは悪霊の顔を見つめて告げる。

「愛しています。」

『ふん。 よく言ったものだ。
さ、子供ともども、死んでもらおう!!』

黒い肌した腕が伸びてきて、彼女の腹に触れようとする。

「止めて!!
お願い…私の話しを聞いて!!」

『何!? この期に及んで命乞いか?』

「違うわ。
でも…聞いてちょうだい。」

ファリアは悪鬼を見据えていた。

きっと昔は美しい金の波打つ髪だっただろう髪と
艶やかだったはずの肌の女。


「あなたは…あなた達が彼の先祖のヘンリーにされた仕打ちは聞いたわ。
同じ女として、苦しみはわかります。
けど…今、私は母親になろうとしています。
この子を守りたいの。
お願い。。。
あなたも子を産んだことがあるなら解るでしょう?
私を憎んでくれて構わない。
いつか殺してくれてもいい。
でも…今はイヤよ!!」

涙ながらに訴える彼女を見つめる。

『確かに私も子供はいた。
しかし…ヘンリーに無残に殺された。
あの男にとって私達は単なる快楽を得るための道具…だった。』

ファリアは女達が受けた仕打ちに同情する。

   (…この人たちは男性に大切に愛されたことがないんだわ…)




「ねぇ… 私を殺したい?
それなら…しばらく私の中に留まっていればいいわ。」

『何?!』

「ヘンリーの子孫の彼のことを解って欲しいの。
彼は…リチャードはそんな人じゃない。
あなた達が呪っている血筋の人たちは今はそんな残酷な人じゃないの。
だから…」


女が妃の乙女を見詰めた。

『ふん。 言いなりになるのはイヤだが…そなたの申し出を受けよう。
その男が呪いに値する男かどうか見てやるわ。』


それだけを告げると、黒い霧状になって彼女の中へと入っていく。










―翌日

新婚の妃は昨夜の出来事を話さなかった。

きっと信じてもらえない。
夢だったのではないかとも思えたから。




優しく甘い新婚のふたりは周りの目を気にせず、ベタベタしている。


そんなふたりを王家の一家は優しい目で見つめていた。



夜…


昨夜と同じように妃は愛しい夫の皇太子に抱かれていた。


「…ファリア…」

愛しさを込めて耳元で名を呼ばれるだけで、身を震わせる。

「…リチャード…ぉ…」


そのお腹に子が宿っているのをいたわりながらも
彼は愛しくてたまらない妃を抱きしめる。

「あ…あぁん…」

「…はぁ… ファリアぁ…」



ふたりの甘ったるいほどの声が寝室に響いていた。

リチャードの手が指がくちびるが熱くて、彼女は乱れている。



優しさと愛しさを込めて抱かれる悦びをファリアだけでなく
中にいた昨夜の女も感じていた。


その女の姿はいつしか、美しい金髪と白い肌を取り戻していた。



ファリアが彼に抱きしめられて眠りに落ちる頃、
女はふっと彼女から出て行く。


  『ありがとう… 若き妃よ。 そなたも子も大事にな…』






彼女は夢の中でその言葉を聞いた気がした。







  


皇太子妃は無事に男児を出産。

彼と同じ金の髪を持つ子。



王家一家と国民に祝われる。



それからさらに2年後。
再び身ごもることになる。





「なんで…二人目が出来たんだ?
呪いのせいで、子は出来ないはずじゃ…?」


皇太子の言葉に妃は微笑みながら応える。

「たぶん… もう呪いは無いわ。」

「え?」

「たぶんあの女性たちは… 気づいたの。
あなたの血筋を呪っても、血脈は続いてる。
永遠に囚われてるのは自分達だって。
きっと… 今頃は何処かに生まれ変わっているかもしれないわね。」

「え…?」

「ひょっとしたら…この子はその女性かもね。」

ファリア皇太子妃は明るい日差しの中で微笑む。

自分も理解できる。
相手を憎んでも何もならない。
むしろ愛してしまえば、幸せになれるのだと。


数十の女達の暗い想いはたったひとりの乙女の想いによって浄化されていた。






Fin


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(2006/3/22)


*あとがき*

や、やっと終れた〜★
描こう描こうと思っていてもなかなか、時間が〜(涙)
ゲームに走ってしまったのも歩けど。
やっぱり自分ひとりの時間がないと
脳内の文章がまとまらないわ〜。
しかも今回の7&8は下書きナシのぶっつけ本番!!

脳内の画像をダイレクトに出しちゃいました♪



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